Cryptococcus neoformans 〔クリプトコッカス〕

Cryptococcus neoformans 〔クリプトコッカス〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • GPC-hugeと表現されるほど巨大なGPCとして観察される.
  • Candida属に比して明確なのは莢膜の存在であるが,継代培養が続くと莢膜が確認しづらくなる.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: FLCZ
抗菌薬の待てない人: LAMB+5FC
エキノキャンディン系は無効である.
ポイント
  • 細胞性免疫不全状態での感染が非常に典型的.具体的にはHIV・リンパ増殖性疾患・サルコイドーシス・ステロイド療法・モノクローナル抗体製剤・臓器移植・肝硬変等である.
  • 本邦における151症例の検討[1]ではそれでも基礎疾患を持たない患者が約半数を占めた.
  • 問題となりやすいのは中枢神経系への感染であり,最も頻度が高い.血液培養陽性とあれば,無症候でも髄液穿刺とすべきである.
  • 他には皮膚・前立腺・腹膜.目等は注意しておくべきであるが,事実上あらゆる臓器に感染しうる.
  • HIV患者では前立腺がリザーバーとなっている場合も多く,『前立腺マッサージ後排尿』等を検索するそうだ.
  • 髄膜および血清でのクリプトコッカス抗原は感度・特異度共に高い.真菌感染ではあるが,β-D-グルカンは上昇しにくいと言われる.ただし,真菌血症を伴うような場合には上昇もありうる.
  • 日本にで近年疑い例が報告されたが[2],クリプトコッカス属には病原真菌としてC.gattiiという亜種が存在し,こちらは健常者に対し旺盛に感染.中枢神経系に腫瘤を形成するような感染症を起こす.加えて,クリプトコッカス抗原検索も感度が低下してしまうようである.
参考文献
  1. [1]  J Infect Chemother. 2015 Jan;21(1):23-30.
  2. [2]  Emerg Infect Dis. 2010 Jul; 16(7): 1155–1157
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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