Helicobacter cinaedi 〔同定困難菌〕

Helicobacter cinaedi 〔同定困難菌〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
グラム陰性らせん桿菌: Gram Negative Spiral Rod
染色の特徴
  • Gram陰性のらせん桿菌.3~4回転未満
  • 良く似た像にCampylobacterがあるが,それよりはやや長く見られることが多い.
  • コロニー染色するとやや長めに見える?
頻度
★☆☆
抗菌薬
ABPC,CEZ,MEPM,GM ,MINOが使用可能らしい.

LVFX,CPFX,AZMなどキノロン・マクロライドは耐性の恐れ
ポイント
  • かつてはCampylobacter属に分類されており,後に分離され,Helicobacter 属に編入された菌種である.ほぼ同じような経過でHelicobacterになった近縁種にH. fennelliaeがいる.
  • 発見当初はホモセクシャルの男性の肛門スワブからの分地となっており,免疫不全者の下痢の原因として注目された.[1]
  • 血液疾患,担癌,ステロイドと言った免疫不全の要素を持つ患者から多く検出され,Focusは発見のきっかけになった直腸炎,蜂窩織炎,菌血症が多く報告される.健常人に発生する場合には丹毒,蜂窩織炎といった軟部組織感染症の割合が多い.[2] が,どうやら無脾症のような液性免疫不全もリスクとなるようである.[3]
  • 菌血症の検出は培養に通常以上の時間をかける必要があり,本邦での単一施設での検討では平均5.5日で,2~12日の間で分布していた.通常施設での血液培養は5日で終了とするところが多いが,本菌検出の55%は5日以上経ってからの陽性報告であり,それでは短すぎるかもしれない.免疫不全患者の菌血症を疑う場合には特別に培養を長くする必要があるだろう.[4]
  • 感染源は多くの場合明らかでないが.ヒトの腸管に常在する可能性があることに加え,イヌ,ネコ,ハムスター,トリ,サル,キツネなどからも検出がある.特にハムスターは有名なリザーバーであり,ここからの感染に関しては検討がなされるべきかも知れない.[2]
  • 抗菌薬の感受性は一般によいとされる.ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系,リファンピシンなどを単独または併用使用しての治療成功例が多く報告されているが,キノロン系に関しては耐性を示す報告も多い.といっても,正確なMICなど決めようがない現状であるため,キノロンは使用しないほうが良いだろう.再発も多く報告があり〔[5],[6]〕治療期間は報告によりまちまちである.(10日~12週間)相応の免疫不全が背景にあるのが常態化しているため長めの治療がいいのではなかろうか..
参考画像
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  BMC Infectious Diseases 2006, 6:86
  3. [3]  Ann Lab Med. 2012 Nov;32(6):433-437.
  4. [4]  J. Clin. Microbiol. May 2014 vol. 52 no. 5 1519-152
  5. [5]  日呼吸会誌 45(1)2007.26-30
  6. [6]  Int J STD AIDS January 1, 1997 vol. 8 no. 1 59-60
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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