Leuconostoc mesenteroides 〔VCM無効菌〕

Leuconostoc mesenteroides 〔VCM無効菌〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
GPC short chain
染色の特徴
  • グラム陽性球菌.腸球菌程度の短連鎖となる.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: VCM + ABPC(レンサ球菌の経験的治療として) OR ABPC+GM(菌が同定できたあと)
VCMは無効 PCG,ABPC推奨 詳しくは下記
エラー注意
  • 初期鑑別は非常に難しい.
ポイント
  • 1878 年にTsenkovskii Lらにより分離された菌.Leuconostocは『無色の』を意味するLeucoと藻の一種でレンサ球菌のような形態を持つNostocを合わせて名付けられた.mesenteroidesは『腸間膜のような』という意味を持つが,ここはなぜこうなったのかちょっとわからなかった.知ってるヒトはこっそり管理人に教えてほしい..
  • 発酵業によく使用される乳酸菌であり,特に植物の発酵した場所(農場など),ワインやチーズの発酵過程で活躍する.ヒトの腸管にも常在していることがある.
  • 当初,病原性は低いと見積もられていたが,連鎖球菌や腸球菌と似た性質を持つことから誤同定されやすく,想像よりも病原体となっている例が多いことが予想される.[1]
  • 1985年に初めて人への感染が報告され[2] ,その際の患者は免疫不全であったが,近年菌血症を含む様々な感染形態が免疫不全,正常,新生児,高齢者問わず報告されており,短腸症候群の小児例のケースシリーズ[3]やスペインの3次医療機関で発生した院内アウトブレイク事例[4]では非経口栄養が主要なリスクファクターと分析されている.
  • 抗菌薬の感受性はVCMに高い耐性を示すことが大きな特徴となっている.が,多くはペニシリンGが有効であり,アンピシリンと合わせてセファロスポリンよりも活性が高いとされる.カルバペネムも選択肢に入るが,耐性株の報告もある.LZDは他の連鎖球菌に比して高いMICを持つので,疾患によっては使用は避けたほうが良いかもしれない.DAPは血流感染で成功裏に使用された実績がある.[5]
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  Antimicrob. Agents Chemother. September 1985 vol. 28 no. 3 458-460
  3. [3]  Clin Microbiol. 1990;28:2125–2126.
  4. [4]  Emerg Infect Dis. 2008 Jun; 14(6): 968–971.
  5. [5]  J. Antimicrob. Chemother. (2001) 47 (3): 364-365.
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university