Eikenella corrodens 〔HACEK シリーズ〕

Eikenella corrodens 〔HACEK シリーズ〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 細長い小型のGram陰性桿菌(GNR-s)
  • 緑膿菌のような非発酵よりもなお小型である
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CTRX
抗菌薬の待てない人: MEPM
多くはABPC感受性で,稀にβラクタマーゼ産生
一般に第2世代以上のセフェム,キノロン,カルバペネム感受性[3]
第一世代セフェム,クリンダマイシン,メトロニダゾール耐性[3]
エラー注意
  • IEの起因菌として重要.
ポイント
  • 1958年にM.Eikenにより同定,当初は嫌気性菌としてBacteroides種となっていた菌である.
  • 1972年に新種として独立,Eikenellaの名前を与えられた.Corrodensとは『腐る,腐敗する』という意味である.この菌の半分程度の株において,血液寒天培地上にコロニーを形成する際,『Pitting』と呼ばれる凹みを作ることから名付けられている.(管理人の撮影したコロニーはそんなものなかったため,参考文献[2]にて確認あれ.)多くは半透明の小型で薄く広がるコロニーを形成する.
  • 主に口腔内,歯周ポケットなどに常在し,歯科領域ではある程度の知名度を持っている菌種であり,歯周病,その発展形となる歯性上顎洞炎や深頸部膿瘍,膿胸,の起因菌として一定の発生頻度を持つことが知られている.[1]感染は殆どが混合菌感染であり,Streptococcusと同時に検出されることが多い.経過は一般に亜急性以上の緩徐なものとなる.[3]
  • 免疫正常者においても菌血症,髄膜炎を起こし,心内膜炎の稀な起因菌,特に培養に時間がかかるものとしてHACEKのひとつに数えられる.が,感染者の多くは頭頸部に悪性腫瘍を持つ免疫不全患者である.[3]
  • ヒト咬傷,動物咬傷の感染としても重要であり,Clenched-fist injury(パンチが歯にあたって,基関節部に受傷すること)が有名である.
参考文献
  1. [1]  J Natl Med Assoc. 2001 Jun; 93(6): 224–229.
  2. [2]  Kandi, J Med Microb Diagn 2015, 4:2
  3. [3]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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