国家試験特集!! 110F-26

昨日の言葉をいきなり裏返すわけですが,どうやらもう1問,Gram染色の問題があったようですね.

こちらも非常に実践的な内容で,嬉しい限りです.

こちらも掘り下げての解説が必要ですね.

問題概要

110F-26 臨床問題

86歳女性 左膝の痛み
押し車歩行程度のADL,右膝は変形性関節症あり
3日前からの左膝痛にて受診あり.Vitalは高熱であるが,頻脈はなし.内服薬は不明.家族歴は妹に関節リウマチ.
身体所見では左膝の発赤・腫脹・熱感・圧痛で膝蓋跳動が見られる.
採血ではCRP弱陽性.

ここで膝関節のXpあり,関節内に石灰分の沈着がある.

関節穿刺が施行されていて,関節液のGram染色が以下の様な写真です.

Pseudo goat次にすべきは何でしょう.

a.関節造影
b.関節MRI
c.関節鏡
d.ガリウムシンチ
e.偏光顕微鏡

多くの方が『関節の写真は過去問ででた!』と思ったのではないでしょうか.

Gram染色が出るのは始めてですが,これは偽通風.確定は E の偏光顕微鏡による結晶の確認になります.

もちろんページがあります.
近年自己炎症症候群のいち亜系ではないかとも言われる偽通風,calcium pyrophosphate dehydrate deposition disease:CPPDが正式な名称で,膝・肩と言った大関節のみならず環軸椎・脊椎関節・腱付着部などに異所性沈着し,炎症を起こします.
高齢であることが発症のリスクですが,副甲状腺に異常などあれば50歳以下でも発症するそうです.
多くは今回のプレゼンテーションにように急性発症し,片側性の関節腫脹,発熱,(今回はCRP 2でしたが)強い炎症反応を起こします.
問題になるのが,入院中でも容赦なく発生し,なぞの院内発熱のかなりの割合を占めていることですね.(入院患者に高齢者が多いことも一因ですが)

重要な鑑別診断は間違いなく化膿性関節炎.これは急性の単関節炎で発熱を伴うというPresentationがよく一致するためです.

一般に化膿性関節炎は全身状態が悪く(Sepsisで),細胞数が多い(5万以上:WBCが『ごまんといる』で覚えましょう)ことが鑑別点になります.が,そこよりも根本的なところに

※単関節炎の診断において,関節液を採らないと話にならない

というのがこの問題最大のポイントではないでしょうか.来年度からの皆さん.

何科を目指すにしても『膝関節穿刺』は出来るようにしておきましょう.

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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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