Pasteurella multocida 〔パスツレラ〕

Pasteurella multocida 〔パスツレラ〕
喀痰
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
グラム陰性球桿菌: Gram Negative Coccobacili
染色の特徴
  • 小型で球菌様に見えることもあるため球桿菌と呼ばれる。
  • 視野全体にぱらぱらと存在する。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: DOXY OR MINO OR LVFX
エラー注意
  • 同様の見え方・条件のH.influenzaeに注意!頻度としては圧倒的に多い.
  • ゴミと間違えて見落としてしまいがち.
  • また,混合感染を見落としがち.
ポイント
  • フランスの高名な微生物学者,Louis Pasteur(1822 – 1895)により同定され,彼の名前から名付けられた微生物.初同定はトリの下痢の起因菌としてであった.
  • イエネコの100%,イヌにも75%程度は口腔内常在があると言われており,時に彼らの疾患の元ともなるZoonosis起因菌である.ウサギ・豚も保菌していることがある.
  • 有名なのは動物咬傷後の皮膚軟部組織感染で,本菌によるものは特に進行が早く,症状もキツイことが知られている.[1] が,このようないわばDirect penetrationによる感染発生の他にも侵襲性感染の起因菌となり,意外なことに呼吸器感染はその代表である.
  • Gram染色ではこのようにH. influenzae様の小型で染色性のよくない小桿菌として描出される.一部は球菌のようにも見え,ますます区別しにくい.高齢者や気道系の背景疾患持ちに多いという特徴も同様である.
  • 高齢で,COPDなどの気道疾患を背景に持つ患者,中でも日常的に動物曝露を受けるような例に発生しやすく,本邦でも報告はある.[2]
  • 海外でもネコを元とした市中発症は報告されていおり,残念ながら本菌独特の症状経過はないようである.こまめに愚直に動物接触歴を洗う他ない.[3]
  • 本菌は幸い耐性機構には恵まれておらず,PCGが有効であることもあるが,基本的にはβラクタマーゼ配合ペニシリンでの治療が推奨される.DOXYやニューキノロンも感受性があることが多く,これらはペニシリンアレルギーの患者では使用しやすいだろう.
参考文献
  1. [1]  Up to date : Pasteurella infections
  2. [2]  感染症学雑誌 64(9), 1200-1204, 1990
  3. [3]  Respir Care. 2004 Dec;49(12):1528-9.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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