Edwardsiella tarda〔エドワードシエラ〕

Edwardsiella tarda〔エドワードシエラ〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 腸内細菌様のGNRであり,基本的にその他の菌との区別は困難である
  • 今回の検体では安全ピンサインは確認できなかった.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: AMPC OR LVFX OR S/T
抗菌薬の待てない人: 1st gen Cephalosporin + LVFX ± MNZ DOXY OR CLDM + LVFX ± MNZ DOXY OR MEPM + MINO
待てない人の選択は,重症軟部組織感染症としてのもの
エラー注意
  • 腸内細菌との区別は困難
  • コロニーの状態でも,サルモネラとの鑑別が難しい
ポイント
  • 1965年に腸内細菌科の新分類として提案された種族である.名前は元CDCの細菌学者として高名な人物であり,特に腸内細菌科の分類で功績を残しているようで,米国微生物学会のsoutheastern branchでは彼の名前を取った賞もあるようである.
  • 腸内細菌科には属するものの,人間の腸内には通常常在しない.むしろ淡水などの水系に多く存在し,水生生物の病原菌としても有名である.[1]
  • ヒトへの病原性を持つ場合には多くは腸炎として発症するが,肝胆道系の疾患を背景に持っている患者では,胆道系感染・肝膿瘍・皮膚/軟部組織感染症としての発症もあり,時に菌血症の形態をとる.[2]
  • とくに軟部組織感染症は重症の壊死性筋膜炎を呈する場合があり,Aeromonas hydrophila や Vibrio vulnificus と共に,水系への暴露をきっかけとした感染症として知っておくべきものであると思われる.
  • 同定上の振る舞いはSalmonella属との共通点を多く有し,硫化水素の産生を行う点も同じである,が,どうやら産生までの時間がゆっくりらしい.名前の部分のTardaはその点をかけて『怠惰な』との訳であるようである.
  • 抗生剤への薬剤耐性は基本的にはない.ABPCはじめほとんどの抗生剤は効果が期待できる.Definitive therapyにはやはりβラクタムが多用されるようである.[3]
参考文献
  1. [1]  1. [Clin Infect Dis. (1993) 17 (4): 742-748. ]
  2. [2]  2. [International Journal of Clinical Practice Volume 59, Issue 8, pages 917–921, August 2005]
  3. [3]  Antimicrob Agents Chemother. 2001 Aug; 45(8): 2245–2255.
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university