Candida tropicalis〔カンジダ・トロピカリス〕

Candida tropicalis〔カンジダ・トロピカリス〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
グラム陽性球菌で巨大なもの:GPC-huge
染色の特徴
  • 通常の菌よりも遥かに大きな球菌として染色される.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: FLCZ
抗菌薬の待てない人: AMPB OR VRCZ
ポイント
  • 1910年にOidium tropicaleと名付けられ,以降紆余曲折あって今の名前に落ち着いている.熱帯の,という形容詞ではあるが,ドコがどう熱帯なのかはわからない.
  • 臨床的に比較的頻繁に分離される非アルビカンスカンジダである.Candid albicansと薬剤感受性などはさほど変わらないが,患者背景ならびに病原性が異なる.
  • 臨床的に真菌血症を生じた例の中で,特にalbicansとの比較を行った研究では,tropicalisは 好中球減少症の患者に多く,必然的に白血病患者でより頻繁に検出される.[1]
  • 同じ報告から,検出時の全身状態:Acute Physiology and Chronic Health Evaluation Ⅱスコアやカテーテル関連感染症の頻度とは相関が無かったそうである.
  • が,好中球減少患者に対しては強い病原性をもち,albicansやその他の非albicansカンジダより播種性病変を形成することが多い.[2]
  • 本菌への感染はICU滞在が長期化する傾向にあり,病原性の高さを間接的に示しているが,真正面からtropicalis感染は予後不良の因子であるとする報告も複数ある.[3][4]
参考文献
  1. [1]  Clin Infect Dis. (2001) 33 (10): 1676-1681.
  2. [2]  [Infect Cont Hosp Ep 28: 570–576.]
  3. [3]  Int J Antimicrob Ag 11: 1–6.
  4. [4]  Lancet Infect Dis 3: 685–702
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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