Candida albicans〔一般的カンジダ〕

Candida albicans〔一般的カンジダ〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
GPC-huge
染色の特徴
  • 非常に大きなGPCとして染色される.
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: FLCZ
抗菌薬の待てない人: VRCZ OR AMPB
一般的にアゾール感受性であるが,眼内炎などの場合は注意
エラー注意
  • 他のCandida種とは鑑別困難
ポイント
  • 病院で内科医をやっていれば,必ず一度は痛い目にあう真菌.ヒトの消化管を中心に常在し,免疫不全患者の内因性感染にもデバイス挿入後の外因性感染にもなりうる.
  • カンジダ血症ならびに深部カンジダ感染症の両方を含んだ概念である侵襲性カンジダ症は,侵襲性真菌症では最もコモンであることに加え,死亡率は,抗真菌療法を行ってなお40%と非常に高い.[1]感染症を専門としない医師であっても,本菌への理解は充分にしておくべきと思われる.
  • Candidaとしてはかつては本菌が大多数であったが,現在は約半分程度となり,その他の非Albicans candidaが増加傾向である.[1]
  • 非Albicans candidaと本菌は薬剤感受性に少なくない違いがあり,できるだけ早期に鑑別出来ることが望ましいが,事実として困難であることが多い.が,それでも区別できる可能性の一つとして,Gram染色での形態の違いが挙げられる.
  • 最も分かりやすいのは,トップ画像のような『仮性菌糸』の形成である.これはalbicansによく見られる特徴の一つであり,ある研究では血液培養の直接塗抹検鏡にて仮性菌糸を認めることで感度85%,特異度97%でalbicansの鑑別が可能であったという.[2]
  • しかし上記報告は2000年代初頭に行われたものであり,かつ非albicansではCandida glabrataが大勢を占めている地域のものである.glabrataは仮性菌糸の形成が非常に少ない種であり,対して日本の非albicansの多くを占めるCandida parapsilosisはglabrataよりは仮性菌糸形成の頻度が高い.日本でそのまま適応してよいものか,悩ましい所である.
  • 事実,参考画像のようにCandida tropicalisが仮性菌糸を旺盛に作っている様子も間々観察され,気をつけないといけない.
  • 治療は一般にアゾールが効力を保っている場合が多い.ただし,カンジダ血症に10%程度で付随する眼内炎では治療期間の延長が必要であり,カンジダ血症の認知の際には ・フォロー血液培養 ・眼科検索 ・デバイス抜去 をセットで行っていただきたい.
参考画像
参考文献
  1. [1]  (N Engl J Med 2015; 373:1445-1456 October 8, 2015)[http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1315399]
  2. [2]  European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases May 2007, Volume 26, Issue 5, pp 325-329
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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