Elizabethkingia meningoseptica〔エリザベスキンギア〕

Elizabethkingia meningoseptica〔エリザベスキンギア〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
GNR-small
染色の特徴
  • 小型のGNRとして染色される
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 第一選択は決まっていない
抗菌薬の待てない人: VCM OR PIPC/TAZ OR キノロン系 OR S/T
VCMが有効なGram陰性桿菌として有名ではあるものの,VCMへの反応などは菌株ごとに異なり,第一選択は未だ決まっていない.
エラー注意
  • βラクタムは全般に無効と考えて良い
ポイント
  • 1959年に新生児髄膜炎の起因菌として始めて報告されたブドウ糖非発酵菌である.その後,いろいろ経て現在の菌名に至るが,Elizabethkingiaはエリザベスキングさんが発見したことに由来するようだ。
  • 基本的には小児,特に新生児に於いて致死的な髄膜炎を発生させる日和見菌であり,免疫正常者ではまず話題に上がらない.菌血症や肺炎,心内膜炎など,発生させる感染部位は様々で,そこは先入観を持たずに相対するべきであろう.[1]
  • 感染の大半はNICUの近辺で発生し,洗浄用の生理食塩水や消毒用クロルヘキシジン,挿管チューブなどにコロナイズしている.つまるところ,多くは院内感染として発症するのである.
  • ただ,検出=感染でないことはこの菌に関しても同様であり,新生児の挿管チューブに本菌がコロナイズしていても,大半は臨床的な感染症とならなかったとする報告がある.[2]
  • 治療薬も何かと話題になりがちである.多くのβラクタム薬は染色体性のメタロβラクタマーゼにより無効化(しかも2種類のメタロを持っているらしい)される.[3]
  • VCM+REFというMRSA人工物感染と見紛うようなレジメンが第一選択であると(管理人は)思っていたが,グリコペプチドの感受性に関しても認める時と認めない時があり,安易に第一選択と思わずに臨床的に反応がなければ次の選択肢にさっさと進むべきである.
  • 選択肢として近年多用されるのはPIPC/TAZである.いきなりβラクタムであるが,何故か本菌のβラクタマーゼを回避出来る場合があるようだ.その他としてはキノロン(シタフロキサシン・レボフロキサシンがよいらしい),MINOなどテトラサイクリン系,S/Tも使用できる場合があるようである.[1]
  • ただ,上記の選択薬をin vitroで活性をチェックしてから使用してもなお,in vivoでは裏切られることもあり,最終的にこれまでの抗菌薬投与歴やアレルギーなどのその他の要素を鑑みて,Case by caseの対応とする他無いと思われる.
参考文献
  1. [1]  Int J Pediatr. 2011; 2011: 215237.
  2. [2]  Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2009 Dec;28(12):1415-9
  3. [3]  Antimicrob. Agents Chemother. April 2012 vol. 56 no. 4 1686-1692
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university