Candida krusei〔チョコレートカンジダ〕

Candida krusei〔チョコレートカンジダ〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
巨大なGram陽性菌:GPC-huge
染色の特徴
  • 非常に大きなGPCとして染色される.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: MCFG
抗菌薬の待てない人: VRCL
エラー注意
  • 他のCandida種とは鑑別困難
ポイント
  • 非アルビカンスカンジダの中でも特に血液悪性腫瘍や固形臓器移植のような強力な免疫不全に多いとされる菌種である.これらのリスクや事前のアゾール投与のないかぎり,なかなかお目にかからない.[1]
  • 世界的に見ると,Candida種の中では5番目の頻度である.[2]
  • ただ,この頻度にはかなり地域差があり,最も検出の多いチェコなど中欧では7%程度.アジアは反対に少なく,0.5%程度とのことである.[3]
  • 自然界では植物の表面に存在することが多く,人間の営みとは意外な部分で関連がある.その一つがチョコレートであり,カカオ豆のパルプに存在することの多い本菌は発酵によりチョコレートの香りを出し,カカオ豆を加工しやすくする行程に使用される.[4]
  • 治療という面では,厄介な薬剤感受性を持っており,FLCZは自然耐性である.[2] AMPBへの耐性も出現しつつあり,将来的にはMDRとなるポテンシャルを持つ.
  • 幸い同じアゾール系でもVRCZは感受性の保たれていることが多く,エキノキャンディン系は充分な感受性を残しているため,菌名が判明したあとにはこれらを使用するのが無難であろう.
  • また,抗真菌薬以外の治療では,カンジダ血症に10%程度で付随する眼内炎では期間の延長が必要であり,カンジダ血症の認知の際には ・フォロー血液培養 ・眼科検索 ・デバイス抜去 をセットで行っていただきたい.
  • 参考画像にはKruseiのコロニー写真を残しておく.
参考画像
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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