Aspergillus flavus〔アスペルギルス〕

Aspergillus flavus〔アスペルギルス〕
膿瘍
染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
Gram positive fungi
染色の特徴
  • Gram染色に染まりにくく,透けて見える.
  • 糸状真菌で45°の角度にY字型に分枝する.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 基本的には待てないシチュエーションが大半である
抗菌薬の待てない人: AMPB OR VRCZ
上記2剤が有力で,それ以外の抗真菌薬はあくまでサルベージ用,という立ち位置である.具体的にはイトラコナゾールやカスポファンギンが候補となる.
エラー注意
  • Gram染色の感度は低い.
  • シュウ酸結晶があったら積極的に探すとよい.
ポイント
  • Aspergillus は1972年にはじめてイタリアの生物学者により発見・命名された真菌である.
  • 基本的にはありふれた真菌であり,土,水,食物,防火建築材,換気設備,コンピュータの冷却装置などあらゆる所に存在する.その胞子を1日に100~2000は吸い込んで,吐き出していると言われる.
  • 興味深いことに免疫が低下していても,正常であっても過剰反応であっても人間には病原的に働くことがある.低下の時は悪名高き侵襲性アスペルギルス症となり,その1年死亡率は80%を記録し[1],正常ならばアスペルギローマとして肺に慢性的に住み着く.そして過剰反応するとアレルギー性気管支肺アスペルギルス症となるのである.
  • 世界的に侵襲性アスペルギルス症で最も検出されやすい種はA. fumigatusであり,本菌は2番めに検出が多い.次点はA. terreusやA. nigerであるが,A. terreusは臨床的にAMPBへの耐性をしめすため,相手にすると厄介である.また,A. nigerだけは病理組織内にメラニン色素を含むため,病理標本でも同定が容易である.
  • 侵襲性感染の診断は通常の細菌同様にはいかない.血液培養は播種性疾患でも陽性化は多くなく,病変部周辺からの病理組織などのほうが比較的良好な検出力を持つ.(とはいえ,そんな手段が取れる人は限られるが..)[2]
  • 非侵襲的な診断方法として使用されるGM抗原は実は多くの問題点が指摘されており, ・最も高頻度なA. fumigatusでやや感度が低い ・PIPC/TAZやABPC/SBTの投与があると擬陽性をしめす事がある. ・その他の真菌とも交差反応する という欠点があり,バッチリハマることは少ないような印象がある.[2]
  • Gram染色ではこのように陽性に染まることもあるが,基本的には真菌の細胞壁を染めるようにはできていないため,染色の抜ける様に映ることが多い. また,視野内にシュウ酸結晶を認めることも,Aspergillus性の病変の特徴である.(参考画像のピントをズラしたもので見えているのがシュウ酸結晶である)
  • 病理検体はより分枝の様子が見やすいので,参考画像に落としておく.
参考画像
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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