Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕

Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕
喀痰
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
グラム陽性双球菌: Gram Positive Diplo-Coccus
染色の特徴
  • やや楕円状の双球菌 長軸方向に並ぶ。
  • 莢膜を有するため周囲が抜けて見える(hallo)。
頻度
★★★
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG OR ABPC OR AMPC
抗菌薬の待てない人: CTRX OR LVFX
エラー注意
  • 脱色不良に注意。モラクセラ・カタラーリスなどと見間違う.
  • インフルエンザ桿菌との共感染に注意。
ポイント
  • 言わずと知れたNo.1肺炎起因菌.抗生剤の無い時代においては肺炎の90%程度はこの菌によるものであったと推測されている.が,現状アメリカでは後述のワクチンによりその割合を30%程度にまで落とすことに成功している.[1]
  • 大人から子供まで,健常者から免疫不全まで幅広い患者層の肺炎を起こすが,実際には喫煙,COPD,悪性腫瘍,肝硬変,アルコール依存,HIV感染,違法薬物,心不全などの背景因子を1つ以上有している患者が大半である.[1]
  • 検査値は炎症反応が強く誘導されることが特徴であり,WBCは多くの患者で12000を超える.が,1/4では正常値,さらに5~10%では6000を下回り,これは予後不良の予測因子となる.[1]
  • 同時に遺伝子や検査学にも多大な貢献をしていることは知られていない.アナタがいつも採血項目に入れるCRP.C reactive proteinであることは知っているかも知れないが,そのCとやらが肺炎球菌由来の抗原であることは知られていない.
  • なお,現在血液培養陽性の『侵襲性肺炎球菌感染症』は第5類感染症となり,診断した医師は1周間以内の届け出が必要になった.
  • 有効な予防方法にワクチンがあり,23もの抗原型に対応したニューモバックス®と,13の抗原型に対応し,小児でも免疫の定着が可能であるプレベナー®が日 本では採用されている.
  • 治療に関しては基本的には高容量ペニシリンで対応出来るとされるが,菌血症を合併するような例ではマクロライド併用で死亡率が下がる[2]という研究もある.(かといってマクロライド耐性でも予後には影響がない[3])
  • なお,2013年のJANIS(Japan Nosocomial Infectious Surveillance)データでは5%はカルバペネム耐性,13%は中等度耐性となっている.肺炎・髄膜炎には『重症だからカルバペネム』は通用しづらい.[4]
  • 今後は市中感染で多用されるキノロンへの耐性化が懸念されており(2013年時点では3%程度だが)適正使用が望まれる菌種である.
  • 市中肺炎としては最高頻度の起因菌であり,参考画像を幾つか載せておく.
参考画像
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  Can Respir J. 2004 Nov-Dec;11(8):589-93.
  3. [3]  American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, Vol. 191, No. 11 (2015), pp. 1265-1272.
  4. [4]  Japan Nosocomial Infections Surveillance Open report
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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