Bacillus cereus〔セレウス菌〕

Bacillus cereus〔セレウス菌〕
血液
染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
グラム陽性『連鎖』桿菌:Gram positive rod chain
染色の特徴
  • 非常に太く大型の桿菌
  • バシラスなので,『バスみたい』とも言われる.
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: VCM
抗菌薬の待てない人: DAP OR LZD
βラクタムは無効であることが多い.
エラー注意
  • 基本的には陽性桿菌だが,検体が古いと,ときに陰性に染まることもあり,GNRと勘違いされる.
  • トップ画像の中にも一部GNRが紛れているが、おそらくそういった現象によるものであろう。
ポイント
  • 世界中の土壌や環境に存在し,95%までのエタノール内でも生存可能な能力を持つ.そのため,時にアウトブレイクかのようにコンタミネーションを起こす.[1]
  • つまり,基本的には病原体となることは稀な菌種である.
  • 雑巾に付着する菌としても有名であり、院内のリネンに巣を作っていることもある.
  • リネンの洗濯ができているからと安心すること無かれ。リネンの清潔度合いの規定にはBacillusは入っておらず、芽胞形成能を持つBacillusを除菌しきれるような設備はかなり限定的かつ高価となる.(こちらもCOI的になかなかおおっぴらに言えない..)
  • Bacillus属は基本的にはβラクタム含むバンコマイシン・クリンダマイシン・アミノグリコシドに感受性であるが,本菌,B.cereusだけは全てのβラクタムに耐性であることがあり,バンコマイシンでの治療が推奨される.〔VanAによる耐性形成も報告がないではないが..〕[2]
  • クリンダマイシンは静菌的なプロファイルにも関わらず,BacillusのIEにおいて劇的な効果を挙げることもある..が,積極的に用いるべきではないだろう.対してキノロンは一応代替薬としての使用経験がある.
  • アミノ酸輸液内で活発に増殖することができ,その手の輸液での血流感染と相関する事が知られ,経静脈栄養の天敵となっている。[3]
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  Antimicrob. Agents Chemother. August 1998 vol. 42 no. 8
  3. [3]  環境感染誌. vol. 12. 81-90. 2012
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university