Mycobacterium kansasii

Mycobacterium kansasii
皮下膿瘍
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
Gram染色で染めることができない菌である.
染色の特徴
  • 染色液に染まらず,背景が白く抜ける
  • 比較的大型の菌であり,WBCとの大きさを比較して頂きたい.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: なし
抗菌薬の待てない人: INH+RIF+EBなど多剤併用
ガイドラインにより記述が少しづつ異なるが,抗結核薬に準じたレジメンが推奨される.
エラー注意
  • ピントをずらすと浮かび上がるように見える.
  • そう見えないなら,それはゴミである.
ポイント
  • 1953年にカンザスで分離同定された菌種であり,それが名前の由来となる.遅発育成の非結核性抗酸菌であり,培地へのこだわりはあまりないが,発育には6週間程度を要することもある.
  • 肺野を主なFocusとし,播種性感染はHIV陰性患者にはまず発生しない.病変はほぼ症候性であり,多くは発見の数ヶ月程度まえから症状を有している.そういった点で,病原性が最も高い非結核性抗酸菌であると認識されている.
  • 自然界にはあまり分布せず,なぜか水道水に居る事が高頻度.人-人感染は発生しないと言われている.エアロゾルが感染源となることはある.
  • 結核より大型で幅広の菌体を呈し,トップや参考画像のようにGhostとなってもやはり少し大きい.抗酸菌染色ではビーズ状や縞模様に映ることもある.
  • CFP-10 と ESAT-6 という結核と共通した遺伝子を持ち,これらがIGRAの標的となるため,T-SPOTなどは陽性を呈することがあるかもしれない.[2]早期診断に有用とする報告もあるにはあるが,治療薬の選別のために結核菌と結局判別する必要があるため検査の意義については疑問が残る.
  • 内科的加療への反応は一般的に良いとされる.治療薬はガイドラインごとに少しづつ記述が異なるが,基本的には抗結核薬が奏功する.が,治療の期間は培養陰性から1年と非常に長期となる.
  • HIV陽性患者での発生率はCD4陽性細胞数50以下となるような進行症例でそこそこ以上の頻度を誇る.予後はあまり良くないが,それは本菌のちからと言うよりはそのような深刻な免疫状態のせいであると考えられる.HIV陽性患者での治療はリファンピシンがARTとの相互作用が多いためにリファブチン(ミコブテイン)が使用されることが多い.
参考画像
参考文献
  1. [1]  Tuberculosis and Nontuberculous Mycobacterial Infections, 6th Edition
  2. [2]  microbiolspec February 2017 vol. 5 no. 1
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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