Klebsiella pneumoniae〔肺炎桿菌〕

Klebsiella pneumoniae〔肺炎桿菌〕
尿
染色像
グラム陰性球菌(Gram Negative Coccus)
染色の特徴
  • 比較的大型のGNRで,莢膜の形成が見られる
  • 莢膜と大きさから,その他の腸内細菌と区別可能かも知れない
頻度
★★★
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CEZ OR ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CMZ OR MEPM
ESBLなどの多彩な耐性機序を呈することがあり,地域ごとの感受性をよく知っておくべきである.
エラー注意
  • 膿瘍などを形成してしまうと,In vitroで感受性があっても第一世代セファロスポリンは聞きにくくなるかもしれない.
ポイント
  • 言わずと知れた高病原性菌であり,尿路感染の他にも腹腔内を始めとした各所で検出され,問題となる.当サイトでも血液培養・喀痰・そして髄液と多彩な検体からの検出が記録されている.
  • 尿路感染での頻度は大腸菌に次いで2位であり,ヒトの腸管に常在し,尿路・胆管・肺炎・膿瘍と様々な感染症を起こす.また,染色体上にClass Aのβラクタマーゼをデフォルトで装備し,ABPC は自然耐性である.
  • 本菌の菌血症は特にアジア地域ではアルコール依存症と強い相関関係にあるが,UTIに関しては必ずしもそうではない.
  • 腎周囲膿瘍を形成するような侵襲性感染の場合は,糖尿病・尿路結石・免疫不全がリスクとして知られ,50%以上で菌血症を伴っている.[1]
  • 下部尿路感染としては前立腺炎としての発症も知られるが,慢性前立腺炎では1.6%程度[2].膿瘍形成をするような重症前立腺炎では遥かに高頻度である[3]
  • なお,気腫性前立腺炎や侵襲性肝膿瘍といった重症感染はなぜかアジア地帯,特に台湾からの報告が非常に多く,日本でもそれなり以上の注意が必要と思われる.
参考文献
  1. [1]  Zhonghua Yi Xue Za Zhi (Taipei). 2000 Oct;63(10):721-8.
  2. [2]  Int J Antimicrob Agents. 2004 Sep;24 Suppl 1:S53-6.
  3. [3]  J Microbiol Immunol Infect. 2003 Mar;36(1):31-6.
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university