S.penumoniae+H.influenzae〔肺炎球菌+インフルエンザ桿菌〕

S.penumoniae+H.influenzae〔肺炎球菌+インフルエンザ桿菌〕
喀痰
染色像
複数菌(Polymaicrobial pattern)
グラム陽性連鎖球菌+グラム陰性桿菌: Gram Positive Coccus Chain+GramNegative Rod
染色の特徴
  • 肺炎球菌はGPC,インフルエンザ桿菌はGNRに見える.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CTRX OR LVFX
エラー注意
  • 目立つ肺炎球菌に眼を奪われがち
ポイント
  • 双方とも上気道に存在し,無症候性キャリアが小児を中心によく見られている.報告によればインフルエンザ桿菌は80%[1],肺炎球菌は最低でも20%の小児が保菌している.[2]どちらもワクチンの普及により減少傾向であるようだが,ワクチンでカバーできない株がその代わりにコロナイゼーションしているらしい.
  • 成人においても,COPDや気管支拡張症など,気道系に背景疾患を持つ患者にはコロナイゼーションが知られている.そのため,稀ではあれど,重症の肺炎が2菌種の同時あるいは2段階的に発生することがあるようである.[3]
  • この2種は定形肺炎の起因菌No.1とNo.2であるというだけでなく,共存することで気道粘膜表面にバイオフィルムを形成しやすくなるという特徴がある.[4]
  • この特徴が臨床的にいかなる意義を持つものであるかに関してはまだ研究がはじまったばかりであるが,動物実験レベルでは両者の共存とバイオフィルムの存在が肺炎球菌による侵襲性感染を増加させるとの結果もでている.[5]
参考文献
  1. [1]  Infect Genet Evol. 2013 Mar;14:125-36. doi: 10.1016/j.meegid.2012.11.023. Epub 2012 Dec 22.
  2. [2]  Lancet. 2004 Jun 5;363(9424):1871-2.
  3. [3]  Journal of Medical Cases,Volume 4, Number 1, January 2013, pages 4-8
  4. [4]  http://femspd.oxfordjournals.org/content/69/2/114
  5. [5]  J Infect Dis. (2010) 202 (7): 1068-1075.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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