Haemophilus influenzae〔インフルエンザ桿菌〕

Haemophilus influenzae〔インフルエンザ桿菌〕
喀痰
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • Gram陰性の短桿菌であり,場所によっては球菌のようにも見える
  • 小型の(0.3*1μm)桿菌で、非常にわかりにくい。
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CTRX
エラー注意
  • 背景にまぎれて見つけにくい.
  • 特に肺炎球菌との共感染では,肺炎球菌のみ強調されて,本菌は見逃されている.
ポイント
  • グラム陰性の好気性球桿菌。Heamo(血液)philus(好む)という意味で,かつてはインフルエンザ後の肺炎として発症していた所を『インフルエンザの原因』として誤認され、このような主体性のないネーミングになってしまっている。[1]
  • 肺炎が最もコモンな感染形態であり、喫煙やウイルス感染後等何かしらの損傷を受けた気道粘膜に定着しやすい。時に菌血症に至るもある。肺炎球菌との共感染が発生しやすいことで知られている。上記の様に背景にまぎれてしまう特徴を持つ上に、肺炎球菌のような『これ見よがし』なヤツがいれば見逃してしまうこともあるだろう。(実際,H. influenzaeの喀痰での検出率は肺炎球菌に大きく劣る.)『肺炎球菌がいれば、H.fluを探すべし』
  • 小児ではHibは特に病原性の高いサブタイプとして有名であり、その髄膜炎は圧倒的な致死率と後遺症発現率を誇る。また、Killer sore throatの一つとして名高い急性喉頭蓋炎もHibが原因になる事が多く、小児との相性はひたすらに悪い。なお、髄膜炎も喉頭蓋炎も菌血症が先立って発生するため、ワクチンでの予防が可能である。
  • 近年台頭してきたBLNAR〔β-lactamase non-producing ampicillin resistant ぶるなーると発音〕により治療選択肢が制限を受けつつあり,特に髄膜炎に於いては第3世代以上のセフェムが必須となっている.現状大学病院ベースでのBLNARは70%に迫る勢いとなっている.[2]
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  日本臨床微生物学雑誌 Vol. 24 No. 3 2014
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university