Klebsiella pneumoniae 〔肺炎桿菌〕

Klebsiella pneumoniae 〔肺炎桿菌〕
喀痰
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 莢膜を有するため周囲が抜けて見える(hallo)
  • 太くてぼてっとした形で四角いイメージ。
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CEZ OR ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CMZ OR MEPM
エラー注意
  • 他の腸内細菌との区別は,時に可能であるが難しい
ポイント
  • 院内・市中ともに肺炎の起因菌とな得る病原体である. が,どうやら院内肺炎としてのPresentationは比較的よく知られているようである.
  • 4543人ものHAPを扱ったレビューでは,K.pneumoniaeはVAPの実に8.4%の頻度を占めており,人工呼吸器関連でない肺炎においても7.1%の頻度を持っていた.[1]この場合はESBLなど,Klebsiellaでは比較的まれな耐性機序を持っている場合もあり,油断できない.
  • 一方,市中感染では本菌は基本的には稀な病原体となる.頻度は地域性がかなりあるものの(台湾などのアジア圏ではおそらくK1などの高病原性株の影響から比較的高頻度である),1%もない.[2]
  • だが,稀ではあるものの,発症後は重症化しやすい傾向にあり,台湾での研究ではK.pneumoniaeは菌血症を伴う肺炎の第一位であった.[3]
  • 臨床的にもかなり強い炎症所見と組織壊死を引き起こす事が多く,壊死性肺炎・肺膿瘍に進展するケースも多い.また,おそらく組織壊死を反映してか,K. pneumoniaeの肺炎での喀痰は膿性に血の混じったものとなることが教科書的には記載される.(管理人はみたことがない)
  • 治療は基本的には地域の疫学に沿って行われるべきである.日本においてはESBL産生などの耐性化は幸いまで多くないが,ABPCには自然耐性であり,世界各国で問題となっているカルバペネマーゼを最初に産生し始めたのは本菌である.
参考文献
  1. [1]  Chest. 2005 Dec;128(6):3854-62.
  2. [2]  Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2005 Apr;24(4):241-9.
  3. [3]  Chang Gung Med J. 2005 Apr;28(4):229-36.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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