Campylobacter jejuni〔カンピロバクター〕

Campylobacter jejuni〔カンピロバクター〕
便
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • グラム陰性らせん桿菌 : Gram Negative Spiral-Rod
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: なし
抗菌薬の待てない人: AZM OR CPFX OR CTRX
ここでの待てない人というのは1日8回以上の水様下痢があったり、高熱・血便等の大腸型腸炎の症状を強く呈している人のことである。
ポイント
  • ギリシャ語のCamplos『曲がった』とBaktron『棒』を語源とする細菌であり,つまるところ結構見たまんまのネーミングである.
  • 世界中で非常にありふれた人獣共通感染症であり,特にこのjejuniは多彩な動物を宿主とすることができる.ただ,その他のCampylobacterは種によって傾向があるようで,coliとhyointestinalisはほとんどが豚から,upsaliensisはイヌから,血管侵襲性が高く,一段階違う病原性を持ったfetusは羊・ネコ・爬虫類・家禽・豚での検出が多いようである.[1]
  • 本菌への感染はすべてが感染症を引き起こす訳ではない.と言うのもは同じ食事を取った集団でも腹を壊すのはごく一部であることからも明らかであろう.条件は色々言われているが,感染数と胃内の酸性環境の通過性に関連があるようである.潜伏期間は1~7日で,2~4日での発症が最も多い.
  • ボランティアでの実験では500程度でも発症することはあるようであるが,多くは10000以上の病原体の摂取が必要である.ここに多量の水分や油といった胃酸を希釈できるような要素が加わり,小腸への到達率が上がると,より少ない数でも感染してしまうのである.このことからわかるように,PPIやH2blockerは感染のリスクである.[2]
  • 多くは腸炎として発症するが,大腸型になると血便やテネスムスが高い確率で報告される.また,回盲部周辺の痛みを特に訴えることが多く,Yersinia enterocolitica とSalmonella enteritidisと同様に虫垂炎と間違われることがある.
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  J Infect Dis. 1988 Mar;157(3):472-9.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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