Candida parapsilosis〔カンジダ・パラプシローシス〕

Candida parapsilosis〔カンジダ・パラプシローシス〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • WBCとの比較をしてもらえればわかるが,かなり大型のGPCである.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: FLCZ
抗菌薬の待てない人: MCFG
Candidaはアルビカンスであるかどうかで対応が大きく変化する.
待てそうであればアゾール系抗真菌薬による治療を行う.
待てないのであればリポソーマルアムホテリシンBを使用する.
なお,眼内炎の併発を来している場合にはアムホテリシンBに5-FCを併用する.
エラー注意
  • この種に限らず、Candida属の菌血症を確認した際には眼科的診療が必須である。高確率で眼内炎を合併し、自覚症状は不可逆変化が起こるまでないこともある。
  • その他,ルーチンに行うべきは以下 血液培養フォロー 経胸壁心エコー 血管内デバイスの検索
ポイント
  • Candida属に属する真菌。非アルビカンスカンジダとしては頻度は高い方。クロモアガー培地では非特異的な真菌として検出され,コロニーはピンク色となる.[1]
  • 1928年に患者の便から始めて検出・分離されたが,当時はMonilia parapsilosisという名前であり,Monilia psilosis,今で言うCandida albicansの類縁という扱いであった.[2]
  • ここでカンジダ属の薬剤感受性だが,臨床材料からの分離がもっとも多いのはCandida albicansである.この菌種にはアゾール系が非常に有効なのだが,C.glabrata,C.kruzeiはアゾールに1次耐性を示す場合がある.また,C.parapsilosis,およびC.guilliermondiiはキャンディン系に1次耐性を示しうる.
  • 上記を踏まえると,血液培養のGram染色で非Albicansを見分けることには大きな意義がある.
  • 真菌血症として発現する際には発熱はほぼ必発であり,Septic shockは22%,腎不全を呈するものが10%程度発生する.高齢者や糖尿病を背景に持つ患者でC. albicansの菌血症が高頻度であることに対し,新生児や静脈栄養を施行されている患者においては本菌のほうが検出頻度が高い.[2]
  • 世界的に見ると,日本を含むアジア太平洋領域でより頻度が高く分離される.民族的な意味があるのだろうか[3]
参考文献
  1. [1]  臨床検査 2014年10月号 (増刊号) ( Vol.58 No.11) 微生物検査 イエローページ
  2. [2]  Clin Microbiol Rev. 2008 Oct; 21(4): 606–625.
  3. [3]  J Clin Microbiol. 2006 Oct; 44(10): 3533–3538.
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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