Streptococcus agalactiae 〔B群β溶連菌〕

Streptococcus agalactiae 〔B群β溶連菌〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
グラム陽性連鎖球菌
染色の特徴
  • グラム陽性球菌で、通常長い連鎖状に配置する。(6つ以上は普通連鎖する)
  • 腸球菌は5つ以下の短連鎖が多い.従って,今回は鑑別が困難であった.
  • ブドウ球菌よりは小さい,らしい.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG
抗菌薬の待てない人: VCM+GM
この場合はABPCも選択肢かも(腸球菌カバー)
ポイント
  • いわゆるGBSと呼ばれるグループであり,無症状のまま下部消化管や外陰部にコロナイズしている.(成人の25%程度)
  • 問題になりやすいのは妊娠時であり,分娩の時に新生児に感染すると劇症感染を起こす.その他感染のリスクとしては糖尿病,CKD,固形癌,中枢神経疾患である.
  • そのため,妊婦はコロナイズしているかどうかスクリーニングを行われているし,もしコロナイズが解れば内服による除菌を行っている.(10~30%は直腸・膣に保菌あり[1]
  • レンサ球菌の中でもPyogenic groupに所属し,病原性・毒性が比較的高い.心内膜炎の原因ともなるため血培から生えれば検索を行うのが良いだろう.
  • 近年,第一選択とされてきたペニシリン系に低感受性の株が報告されており,欧州抗菌薬感受性試験法検討委員会:EUCASTではペニシリン耐性のブレイクポイントが設定されるに至った(MIC≧0.5μg/ml)しかしながら,この低感受性の臨床的意義は明らかでなく,EUCASTも『臨床効果のエビデンスがでるまでは耐性として報告すべし!』という態度をとるにとどめている.
  • また,日本ではペニシリン低感受性に加え,マクロライド,リンコマイシン,テトラサイクリンへの耐性も獲得した多剤耐性株が院内伝播した.[2]
参考文献
  1. [1]  臨床検査2014年10月号 (増刊号) ( Vol.58 No.11) 微生物検査 イエローページ
  2. [2]  J Antimicrob Chemother. 2012 Apr;67(4):849-56. doi: 10.1093/jac/dkr546. Epub 2011 Dec 29.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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