proteus mirabilis〔プロテウス〕

proteus mirabilis〔プロテウス〕
尿
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 中型のGNRで、安全ピンのように両端が濃く染まりやすい
  • その他の腸内細菌との区別は一般に困難である
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CEZ、CTX
抗菌薬の待てない人: MEPM
ポイント
  • 腸内細菌科に属するグラム陰性菌で、全尿路感染の約10%程度の起因菌となっている。特に高齢で、長期の尿道カテーテルが留置されている症例に多いとされる。[1]
  • 尿路に限らず、肺炎、皮膚軟部組織、熱傷部感染、菌血症からの骨髄炎などの感染症の起因菌となることがわかっている。
  • 近年、この菌のヘモリジンやウレアーゼに対する抗体が、RAのような多発関節炎の原因となるのではないか、という指摘もされているが、その関係性を証明できたものはまだあまりない。[2]
  • 特筆すべき病原因子はウレアーゼであり、尿素をアンモニアに変換することが尿のpHを上昇させ、CaやMgを主体とした尿路結石を生成してしまう能力がある。また、アンモニアは他の細菌にとっても貴重な窒素補充元となってしまうようだ。[1]
  • 本菌は鞭毛により液体中での非常に高い運動性を誇るが、液体内でなくとも活発な移動能力を持っている。Sarmingと呼ばれる現象だが、この菌は固形の表面にたどり着くと自身の全長を大幅に伸長し、表面に無数の鞭毛を生成する。(平時は1~2μm程度であるが、swarming formは18μm 程度まで長くなる)それにより、固形表面を這うように移動できるのである。参照画像は手に入ればまた載せるが、これはコロニーの性状にも見ることができるので、[1]で画像を参照されることをおすすめする。
  • これらの形態変化と高い運動性が、尿道カテーテルへの定着性およびそこからの侵入・侵襲に一役買っていることは想像に難くない。
  • 抗菌薬への耐性はその他の腸内細菌と同様にまちまちであるが、大腸菌と比してESBLの割合は低く、AmpCは染色体上には保持していないため、比較的感受性が保たれる傾向にある。
参考文献
  1. [1]  (Microbiol Spectr. Author manuscript; available in PMC 2016 Apr 1.)[https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4638163/]
  2. [2]  Clin Rheumatol. 2007 Jul;26(7):1036-43. Epub 2007 Jan 6.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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