Listeria 治療の選択肢

Listeria 治療の選択肢

Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease より

現状,Listeriaの治療に使用できる薬に関してまとめてみる.用量に関しては各種マニュアルを御覧ください.

  • Ampicillin

現状最も優れているとされる治療薬.とは言え,実は治療経験があるだけで治療試験が実施されたワケではない.
In vitroのデータと動物実験での結果,それに基づく使用経験が,アンピシリンの優位性の最たる所である.〔つまりこれは,他の薬剤に関しても同様で,使用経験の数,および治療失敗の数がその優位性の拠り所となる.〕
ゆえにPCGとの直接比較などはなく,PCGとくらべて良いのかどうかも定かで無い.また,Listeriaに対しては静菌的な作用しか無いことが示されている.

  • Gentamicin

Gentamycinではないので綴り間違いに注意.
多 くの教科書あるいはレビューでは重症のリステリア感染症あるいは髄膜炎では,併用療法の候補とすべきとの意見が見られる.勿論,これも使用経験の成せる技 である.動物実験ではシナジー効果によるアウトカム改善が示唆されており,髄膜炎・Tcell機能不全などの明らかな免疫不全・心内膜炎では併用療法が推 奨される.たしかに,そんな状況では併用を迷う必要はないだろうが,それ以外では..どうだか..

  • S/T合剤

ペニシリンアレルギーがある場合の代用薬としてベストのものである.これもエビデンスは乏しいものの,髄膜炎に対してアンピシリン+ゲンタマイシンの併用療法と唯一比較可能な合剤である.
一部の患者に対しては早期に経口スイッチしても治癒が望めるらしい.アンピシリンとの併用という技も髄膜脳炎では使用可能であるようだ.ただ,妊婦に発生 しやすいのがListeria感染症のそもそもの特徴であるため,妊娠女性に使用できない本剤の使用機会はおもったより少ないのかもしれない.

 

  • Vancomycin

ペニシリンアレルギー患者では使用可能な薬剤であるが,投与中に髄膜炎に発展した報告もなくはない.

 

  • カルバペネム

安全に代用できるが,髄膜炎においては痙攣の閾値をさげてしまう.注意が必要.

 

  • Daptomycin・Linezolid

In vitroでの感受性はある.が,臨床経験はすくない.

 

  • マクロライド・テトラサイクリン

使用のレポートはあるが,信頼に足りない.積極的に選択すべきでない.

 

  • セファロスポリン

全くダメ.

 

ちなみに,Listeriaは中枢神経への親和性が非常に高い菌であり,初診時に髄液所見が正常で,中枢神経症状がないとしても,髄膜炎Doseでの治療が推奨されている.

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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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