Candida glabrata 〔カンジダ・グラブラータ〕

Candida glabrata 〔カンジダ・グラブラータ〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • GPC-hugeと表現されるほど巨大なGPCとして観察される。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: アゾール系抗真菌薬
抗菌薬の待てない人: リポソーマルアムホテリシンB OR 眼内炎の併発を来している場合にはアムホテリシンBに5-FCを併用
Candidaはアルビカンスであるかどうかで対応が大きく変化する.
勿論人工物はすべて取り除く.
エラー注意
  • この種に限らず、Candida属の菌血症を確認した際には眼科的診療が必須である。高確率で眼内炎を合併し、自覚症状は不可逆変化が起こるまでないこともある。
  • その他,ルーチンに行うべきは以下。1.血液培養フォロー 2.経胸壁心エコー 3.血管内デバイスの検索
ポイント
  • Albicansとの比較を中心に概論する.
  • 非Albicans candidaでは最も病原となることの多い菌であり,かつてはTorulopsis glabrataとして別種に分類されていた.食物などによる曝露をうけ,消化管内に常在していることが多い.
  • 膣カンジダ症以外の本菌による感染症は大半が院内発症である.リスクには長期入院・抗生剤の事前使用・アゾールの事前使用・本菌への曝露歴などが挙げられ,これらのある免疫不全あるいは衰弱患者に発症する.[1]
  • C.albicansに比べると発現できる病原因子は少なく,病原性は低いと思われがちであるが,その実死亡率は高い.[1]
  • 臨床的に重要になるのは,アゾール系への感受性がalbicansに比して低いことである.血流感染をきたした場合には,アゾールをFirst choice的に使用することは推奨されず,薬剤感受性が確定するまではアゾールを用いるべきでないとされる.[2]
  • 本菌の第一選択はアムホテリシンBであったが,エキノキャンディン系の登場によりそちらに優位性を移した.むしろ本菌に対してはC. kruseiとともに低感受性が警戒され,積極使用は5-FCとの併用下とすべきである.[2]
  • 菌 血症で考慮されるべきはCRBSIであるが,その鑑別には真菌においてもDifferential time to positivitiy(経カテーテル的に採血したものを培養し,その他の部位からの培養との陽性化までの時間間隔を計測する.)が有用である が,Candida glabrataには6時間のカットオフが推奨されている.(Sn:63%/Sp:75% [5] )
  • 表 在カンジダ症〔膣症など〕では,経口のアゾールが使用できないのは多少不利である.特にカンジダ膣症は50%で非albican candidaが検出され,これに対するGold standerd治療は現状存在しない.ただ,In vitroのデータではglabrataへの活性はフルコナゾール以外のアゾールは保たれていることがあり,フルコナゾール以外のアゾールの経口+治療期 間の延長がオプションとして考慮される.[3]
  • 本菌と非常に類縁の種としてC. nivariensis,C. bracarensisという種がある,ようだ.[4]
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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