Staphylococcus aureus 〔黄色ブドウ球菌〕

Staphylococcus aureus 〔黄色ブドウ球菌〕
喀痰
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
グラム陽性ブドウ球菌: Gram Positive Coccus Cluster
染色の特徴
  • グラム陽性球菌で、ブドウ状に配置する。
  • 今回は貪食像が非常に目立った.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CEZ
抗菌薬の待てない人: VCM OR LZD
DAPは肺には使用できない.
エラー注意
  • ブドウ球菌の肺炎はそもそも稀であり,蓋然性なく入院ではも発生しがたい
ポイント
  • ブドウ球菌の肺炎である.血液や軟部組織・骨などに親和性の高い菌であるが,このような感染症も引き起こす事がある.
  • 主な患者層は市中では小児から若年者に多く,消化管系の症状を随伴することもある.とは言え,頻度は1~5%程度と稀であり,インフルエンザウイルス感染後のエピソードが極めてよく取り上げられる.[1]
  • ただ,その重症度は極めて高く,経過は『Stomy』と表現される.48時間以内の生存率は63%程度しかなく,平均年齢が14.8歳であるということからその悲劇性がよく分かる.[2]
  • 院内であっても死亡率の高さは変わらない.約55.5%という数字もあるが,Onsetは通常の院内肺炎とさして変化なく,特段劇症であったりするわけではないようである.[3]
  • 早期診断ならびに治療が必要であることは言うまでもないが,その診断は難しい部類に入る.Gram染色に関連のある部分では,気管内採痰の検体であっても肺生検と同様の結果になるのは40%程度であり[4],吸引痰では15%ほどしかいわゆる『質のいい喀痰』は採取できない.[5]
  • 治療開始はできるだけ早急に行うことが要求され,このようなGram染色像であった時はInitialには抗MRSA薬の開始がやむなしと思われる.が,起因菌がMSSAであった場合にはβラクタム系の方が効果が高いため,積極的なde-escalationが必要である.
参考文献
  1. [1]  Harrison's principles of internal medicin
  2. [2]  Emerg Infect Dis 2006;12:894-9.
  3. [3]  Chest 2005;128:1414-22.
  4. [4]  Am Rev Respir Dis 1993;147:952-7.
  5. [5]  Am Rev Respir Dis 1988;138:110-6.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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