Aerococcus spp〔エーロコッカス〕

Aerococcus spp〔エーロコッカス〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
4量体形成: Gram Positive Coccus Tetra
染色の特徴
  • グラム陽性球菌.やや大小不同で,ブドウ球菌程のクラスターを形成しない
  • 多くは双球菌程度
  • 特徴的なのはこのような4量体形成とされる
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: VCM
ポイント
  • 基本的にはレアな菌種であり,通常エアダクトなどの環境に存在する.人間への病原性はA.urinae,A.viridans,A.christenseniiが知られている.
  • 好気性Gram陽性菌で,カタラーゼ陰性.病原性は通常弱いが,顆粒球減少等の免疫不全状態では菌血症などの重篤な感染症を発症し得る.[1]
  • 近年,Aerococcus urinaeという菌種による尿路感染が,高齢男性を中心に起こりやすいことが判明している.[2]
  • 今回は血液培養による検出であったが.コンタミネーションである可能性は60%そこそこ.意外に真の菌血症である可能性が一定ある.[3]
  • Focusは前述のように尿路が多いが,Focusのわからない菌血症やIE,椎間板炎も発症し得る.口腔内の唾液腺炎が感染リスクとする文献もある.[4]
  • コロニーの性状が,『小型で』,『α溶血する』という点でαレンサ球菌に酷似しており,それが理由で培養検査では『常在菌』と却下を受けることもあり,これまで冷遇されていたようだ.[2]
  • 感受性は多くがペニシリン感受性であり,CTRXなどのセフェムのMICが変に高い事もある.ペニシリン低感受性株への抗生剤加療はまだ定まったものがなく,そもそもこれらの感受性パターンも経年変化をしているようである.[1]
参考画像
参考文献
  1. [1]  J Korean Med Sci. 2002 Feb; 17(1): 113–115.
  2. [2]  J Clin Microbiol.2000 Apr;38[4]:1703-1705
  3. [3]  IDSA 2013 ポスター
  4. [4]  Eur J Clin Microbiol 1987; 6: 670-3
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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