Listeria monocytogenes〔リステリア〕

Listeria monocytogenes〔リステリア〕
血液
染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
染色の特徴
  • 縦に短い連鎖を形成する.
  • Gram-Variableであり,陰性菌のように見えることもある(特に血液培養)
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: MEPM OR ST
ポイント
  • 有名ながらも落とし穴になりやすい細菌のひとつ
  • 短いGPRであり,ときにコリネバクテリウムのコンタミと勘違いされるが,彼らとは連鎖の向きが異なるところで区別できるかも知れない.
  • 新生児・高齢者・妊婦(リスクは17~100倍)・細胞性免疫不全者において時に致命的な侵襲性感染を起こすことで有名であり,免疫正常者に侵襲性感染をおこすことは比較的少ない.ただ,PPI内服による胃酸バリアの障害などは知られているリスクである.
  • 妊婦での発症はThird trimesterでの発生が最も多く報告されており,この時期の細胞性免疫の低下に関連していると思われる.なお,意外なことに妊婦での発症は(その他のリスクの無い限り)菌血症として発現し,髄膜炎等中枢神経感染は非常に少ない.[1]
  • 中枢神経感染症を疑う場合,髄液培養が陽性となる人は半分もいないし,髄液Gram染色は1/3程度しか陽性とならない.対して,血液培養に関しては70%以上での陽性が知られている.[2]
  • もし中枢神経のリステリア感染を疑う場合,Up to dateでは造影MRIの撮影が推奨されている.というのも,リステリアは髄膜炎にとどまらず,(あるいは髄膜炎なしに)脳幹・小脳を含めた広範な範囲を巻き込んでいること:Rhombencephalitis があり,この検出は髄液からは困難だからである.[3]
  • なお,近年RT-PCRによる検出も行われており,そこそこの感度・特異度のようだが,Commercial useはできないようだ.[4]
  • 低温環境でも生存・増殖が可能であり,[1]その性質を如何なく発揮した前例として米国の多州にわたるカットメロンによるListeria中毒である.30名の死者と117名の患者が発生したこの事件はCDCが記録を始めて以来最悪の食中毒事例となった.[5]
  • 参考画像にGram valuableの画像をのこしておく.
参考画像
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  Clin Infect Dis. 2006 Nov 15;43(10):1233-8. Epub 2006 Oct 10.
  3. [3]  Up to date Clinical manifestations and diagnosis of Listeria monocytogenes infection
  4. [4]  J Clin Microbiol. 2011 Nov;49(11):3917-23. doi: 10.1128/JCM.01072-11. Epub 2011 Sep 14.
  5. [5]  2011 United States listeriosis outbreak
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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