染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
Corynebacteriumに類似した短桿菌
染色の特徴
- 放射状に配置しているように見える
頻度
★☆☆
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人:
ABPC
抗菌薬の待てない人:
VCM
複数菌での感染が多いため,この菌だけをターゲットにしてよいのか立ち止まって考えるべし.
ポイント
- 1958年に虫歯のカリエス部から単離され,同定された菌種[1].当時はActinomycesとして分類されていたが,2018年にゲノム解析により別種と判定され,Schaaliaとなった[2].
- Shaaliaはドイツの細菌学者でActinomyces属の分類に多大な貢献のあったKlaus P. Schaal氏にちなんでおり,odontolyticaは『歯を溶解させる』という意味のギリシャ語である.まぁつまり,虫歯菌であり,口腔内常在菌の一つである.
- 放線菌に分類されるが,血液培養像はCorynebacterium状になることが多く,相違点としては好機培養では検出ができないという点である.
- 放線菌は一般的には嫌気性の性質を持ち,口腔内,消化管,外陰部周辺に常在する.そのため,臨床医として遭遇するのは口腔内感染症(およびそこから波及した頸部膿瘍,縦隔炎,肺化膿症,膿胸)や骨盤内感染(特に異物関連)などであろう.[3]
- 肺化膿症として出現する場合,画像上は典型的には空洞形成となる.そのため,一般細菌,結核感染,悪性腫瘍との鑑別が課題となりやすい.
- かつ嫌気性菌であるため経気道的なサンプリング(気管支鏡など)では培養による証明が困難である.そのため,確定診断を目指すのであれば外科的に採取された検体が使用されるべきで,それが適切な培地・環境で長期間培養に回される必要がある.なんともハードルが高いが,『原因微生物が同定困難な肺化膿症/頸部膿瘍』に関して,細菌検査で留意すべき点として勉強になる.
- 放線菌族が本例の様に血液培養から検出をされる例は基本的には稀であり,ShcaaliaならびにActinomycesにおいてはA. meyeri、A. israelii、S. odontolyticaが比較的高頻度とされている[4]
- 感染巣が病理組織検査の回された場合,硫黄顆粒が検出されることがある.これは放線菌属(Nocardiaも含む)が組織侵襲を行った際に形成される0.1-1mm程度の顆粒物資で,タンパク質と多糖体によって結合・安定化され,菌糸を外敵(この場合は食細胞)がら守る役割を持っている.
- 診断には手間がかかるが,薬剤耐性はほぼ問題にならないと考えられており,通常ペニシリンに対する感受性が極めて高く,βラクタマーゼも産生しない.ただ,嫌気性菌であるのにMNZはIn vitroで感受性がないとされており,ニューキノロンも一般に耐性である.[3]
- 治療においては,特に肺に感染巣を有する場合には半数が喀血などで外科的手術を要する[5].そもそも外科的治療を行った方が最終的な予後がよいことを示唆するケースシリーズ[6]もあり,留意する必要があるだろう.
- 治療期間は半年程度の長期加療が基本的には推奨されているが,外科的介入で感染巣が取り除かれている場合には3ヶ月程度までの短縮は許容されそうだ[7].
参考文献
- [1] J Pathol Bacteriol 1958; 75:455-459.
- [2] Front Microbiol 2018; 9:2007.
- [3] Infect Drug Resist. 2014; 7: 183–197.
- [4] South Med J. 2003 Mar; 96(3):294-9.
- [5] BMC Infect Dis. 2013 May 14; 13():216.
- [6] Ann Thorac Med. 2010 Apr; 5(2):80-5.
- [7] J Antimicrob Chemother. 2009 Apr; 63(4):839-41.
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