Fusobacterium nucleatum〔フゾバクテリウム〕

Fusobacterium nucleatum〔フゾバクテリウム〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
非常に細くて薄い桿菌
染色の特徴
  • 針のような細くて染色性の薄い菌体となる
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: MNZ OR MEPM
ポイント
  • 偏性嫌気性菌で,口腔内咽頭に常在する菌種のひとつである.歯肉炎・歯周病の起因菌として一般的とされており,同種のF. necrophorumとともにヒトに対する病原性が高いFusobacteriumとされる.
  • F. necrophorumはLemierre症候群をはじめとした侵襲性感染症の原因菌として悪名高く,多くは若年の免疫正常者をターゲットとする.対してこのF. nucleatumは高齢者や免疫抑制患者において口腔外で感染を起こしやすいと言われている[1].
  • 多くは歯科治療や歯性感染症との関連を持つとされ,その中で中枢神経・骨髄・肝臓・関節・感染性心内膜炎など多彩な感染巣を形成する[2,3,4,5]
  • 近年,悪性腫瘍と本菌の菌血症との関連[6]や,大腸癌そのものの発生に関わっている可能性があるとして注目されている[7].
  • 抗菌薬選択に際しては稀ながらβラクタマーゼの産生が見られることがあり,βラクタマーゼ阻害薬の併用を考慮に入れる必要がある.が,そもそも複数菌感染の一つとして検出されていることも多く,コイツだけ叩いてていいのか考える必要がある.
  • CLDMならびにMNZに対しても感受性が保たれていることが多く,代替薬として使用可能である.
参考文献
  1. [1]  Clin Microbiol Rev. 1996, 9: 55-71.
  2. [2]  N Engl J Med. 2010, 362: 1326-1333.
  3. [3]  Jpn J Infect Dis. 2009, 62: 381-383.
  4. [4]  BMJ Case Rep. 2012, 10.1136/bcr.12.2011.5335..
  5. [5]  Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 1999, 18: 655-657.
  6. [6]  Anaerobe . 2016 Jun;39:1-3.
  7. [7]  World J Gastrointest Oncol. 2018 Mar 15; 10(3): 71–81.
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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