Achromobacter xylosoxidans〔アクロモバクター〕

Achromobacter xylosoxidans〔アクロモバクター〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
ブドウ糖非発酵菌であるが,この画像ではわりとよく染色されている.
染色の特徴
  • 通常染色性の悪い細めのGNRになる.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CAZ OR LVFX
抗菌薬の待てない人: MEPM OR PIPC/TAZ OR S/T
ポイント
  • 1971年に化膿性中耳炎の患者から分離されたのが最初となるブドウ糖非発酵菌である.[1]
  • 現在では比較的まれながら重要な院内感染の起因菌として知られており,緑膿菌やSerratiaと同様に水系を好む.(同時に検出されることもあるし,芋づる式に汚染が発覚した例もある.[2])
  • Achromoはchromo(色:ギリシャ語)に否定のAがついて『色のない』という意味になり,Achromobacterで『色のない棒状のもの』.xylosoxidansはキシロースを酸化する能力がある,という意味になる.(ギリシャ語の綴りを厳密に論じるなら,xylosoxydansとなるべきのようだが,それはべつにいいか..)
  • 77例の菌血症をレビューした報告によれば,過半(70%)は院内発生となり,もっとも多く見られたFocusはカテーテル感染感染症であった.2番めは肺炎となっており,おおよそ緑膿菌やその他SPACEに準ずる病原体であると認識できる.[3]
  • 背景疾患としては悪性腫瘍が最も多く,心血管系疾患がそれに続く.[3]印象でしかないが,長期留置型カテーテルや中心静脈へのアクセスが確保されがちな患者群と行っていいであろう.
  • 菌血症・肺炎・腹腔内感染・IEと感染症のFocusに指向性はあまりみられず,これも緑膿菌などと同じ傾向である.
  • EUCASTの2021年版(ver.11.0)を確認すると,本菌に関してはAMPC,CTRX,CTX,Ertapenemは内因性耐性として紹介されており,またPIPC/TAZとMEPM,S/Tに関してブレイクポイントの記載がなされている.CLSIは本菌特異的なブレイクポイントを設けておらず,その他の非腸内細菌目細菌として扱うほかない.
  • また,AxyXY-OprZという広範な基質に対する排出ポンプを保有しており,抗菌薬曝露を受ける臨床分離株においては少なからず過剰発現している.様々な感受性に関与するが,特にアミノグリコシド系はこのポンプによる排泄で耐性化してしまう可能性が高い.
  • 菌血症発生時の死亡率は概して高く,15-25%程度はある.これは悪性腫瘍を含む基礎疾患を加味した数値であることを認識する必要がある.
参考文献
  1. [1]  Jpn J Microbiol. 1971 Sep; 15(5):477-81.
  2. [2]  Am J Infect Control . 2021 Apr 19;S0196-6553(21)00199-1.
  3. [3]  Clin Infect Dis . 1996 Sep;23(3):569-76.
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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