Acinetobacter baumanii 〔アシネトバクター市中肺炎〕

Acinetobacter baumanii 〔アシネトバクター市中肺炎〕
染色像
グラム陰性球菌(Gram Negative Coccus)
双球菌にみえることもある.
染色の特徴
  • 基本形はGNCながら、増殖の盛んな時にはGNRにみえることもある
  • 脱色しにくい細胞膜をもつことからグラム陽性に見えることもある
  • Gram染色での決め打ちは非常に難しい。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: MEPM
エラー注意
  • モラキセラカタラーリスやNeisseria属との区別が難しい
ポイント
  • 市中感染としてのAcinetobacterを解説する.一般的な話や耐性株肺炎については別ページがあります.
  • 院 内感染としての発現が多いことは間違いないが,日本をはじめ,オーストラリア北部,台湾など温帯~亜熱帯のアジア地域では劇症型の市中肺炎としての Presentasionを来してくる例も散見される.この場合,殆どの患者は病院到着時には呼吸不全あるいはショックである.[1]
  • また,日本からの報告のある症例では,著明な血球減少をきたしていることがあり,台湾での13例のCase seriesでは13例中6例で白血球減少が確認されている.[2]
  • どういうわけか温暖で湿った気候のときに頻発するようであり,死亡率は院内発症よりも高い.[3]
  • 日 本では夏場に多く見られるとされ,やはり高い死亡率を持つ.こういった劇症肺炎としてのAcinetobacter感染症のリスクとしてはCOPDなどの 気道関係の背景疾患の他,アルコール依存やDMが指摘されている.が,健常者であっても発症しないわけではない.[4]
参考文献
  1. [1]  Clin Infect Dis. (1992) 14 (1): 83-91.
  2. [2]  Leung WH et al. Chest 2006;129:102―9.
  3. [3]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  4. [4]  感染症学会誌 第83巻 第4号 2009; 392-397 小清水ら
  5. [5]  アシネトバクター(耐性株)
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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