Pseudomonas aeruginosa 〔緑膿菌〕

Pseudomonas aeruginosa 〔緑膿菌〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
染色の特徴
  • 細長い小型のGram陰性桿菌(GNR-s)
  • 両端も細く、染色性もよくない
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CAZ OR PIPC
抗菌薬の待てない人: PIPC/TAZ OR LVFX OR MEPM
※施設の感受性をチェック。
エラー注意
  • Gram染色で腸内細菌との区別をしないといけない菌種の一つである.
ポイント
  • 耐性菌・院内感染の代名詞,最も戦いたくない起因菌ランキング3年連続上位〔MRSAとトップ争い 当社調〕!
  • 創部感染などの際に本菌が産生するピオシアニン色素が緑色を呈することが日本語名および学名の由来となっている(Aeruginosa は緑青を意味するギリシア語である)
  • 環境菌で広く分布しており,水場が有名であるものの植物や虫などにも付着することがある.が,ヒトの皮膚への常在はなく,口腔内や糞便中に稀に検出される程度である.[1]
  • 米国ではGram陰性菌の血流感染の4番目の起因菌であり,ICUなどの特定の環境下では特に高頻度となる.日本でもおそらくそう頻度は変化ないだろう.[2]
  • 独立したリスク因子には好中球減少,高齢,膵胆管疾患,重症熱傷,CVあるいは尿道カテーテル,過去3ヶ月の抗生剤治療,水による汚染を受けた創傷,入院歴があり,とくに膵胆管疾患が独立している因子となる点は興味深い.[3]
  • 菌血症のFocusは肺炎・胆道系感染・尿路感染・褥瘡を含む軟部組織感染など多岐に渡るが,40%ではEntry不明となる.
  • 院内でのコロナイゼーション部位は非常に多く,水場を中心に呼吸器・花瓶・掃除道具・バイアルなどでも汚染を受けた例がある.[1]
  • 本菌による感染症が明らかである場合には,一般にhigh doseでの治療が推奨されている.列挙はしないが,その辺Johns HopkinsのABX guideはきめ細かい.
  • 菌血症における予後はMRSAと比しても段違いに悪い.背景因子もあると思われるものの,やはりGNRの病原性を備えているためであろう.[4]
参考文献
  1. [1]  Up to date: Pseudomonas aeruginosa bacteremia and endocarditis
  2. [2]  Clin Infect Dis. (2009) 48 (5): 580-586.
  3. [3]  Clin Infect Dis. (2004) 39 (3): 309-317.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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