Enterococcus casseliflavus〔黄色い腸球菌〕

Enterococcus casseliflavus〔黄色い腸球菌〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
やや楕円形のレンサ球菌
染色の特徴
  • 連鎖は5つ以下くらいが多い
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: DAP
VCMは使用しないことを推奨する
ポイント
  • 腸球菌による感染症の2~9%程度がこの菌種によるとされる[1][2],結構レアな腸球菌の一種である.
  • 名前のcasseliもflavusも『黄色』を意味し,とても黄色っぽい名前が付けられている.コロニー形成の際に色素産生することがその命名の理由となっており,かなり早期から独立した菌種として認識されていた.参考画像に載せておく・(コロニーを綿棒でぬぐっており,白い方はE. faecalis,あきらかに黄色いのがE. casseliflavusである)
  • 人間の腸管内常在菌であるのみならず,自然界では野菜や果物などにも存在してることがあり,非常に広く分布している.[3]
  • 染色体上にVanCという耐性遺伝子を有しており,これはVCMが結合する細胞壁の前駆体となるペプチドの末端構造を変異させ,VCMに対する弱い耐性を惹起する.そのため,この菌は『ナチュラルにバンコマイシン耐性』ということになる.[4]
  • そのため,感受性検査でVCMが『S』になっていたとしても.この菌名がついている場合にはVCMでの治療は推奨しない.(そもそもVCMの感受性検査を行わないというのもアリ)
  • 幸いなことに,VCMは耐性でもペニシリン系への感受性は保たれていることが多いため,ABPCでの治療が選択肢に残る.ABPCが何らかの理由で使用できない場合には,ダプトマイシンやリネゾリドなど新規の抗MRSA薬の他には選択しにくいのが現状である.
  • 血流感染の死亡率はかつては20%とも40%とも言われ,かなり予後不良と認識されていたが,この点はかなりばらつきが大きく,正確な評価は難しい[4][5].だが,この菌が血流感染を起こすようなヒトは胆道系疾患を含む何らかの背景疾患を持っているということ自体は確かなようだ[5].
参考画像
参考文献
  1. [1]  J Clin Microbiol. 1997 Dec; 35(12):3166-70.
  2. [2]  Ann Intern Med, 2001, vol. 135 (pg. 484-92)
  3. [3]  Int J Microbiol. 2016; 2016():4292417.
  4. [4]  Clin Infect Dis . 2004 Jan 1;38(1):53-61.
  5. [5]  Clin Infect Dis, 2001, vol. 32 (pg. 1540-6)
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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