Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕

Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
Gram Positive Diplo-Coccus
染色の特徴
  • 自己融解酵素をもち,このように一部Gram陰性化しているかもしれない
頻度
★★★
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG OR ABPC
抗菌薬の待てない人: CAM OR LVFX OR VCM
エラー注意
  • 血液培養ではとくにGram陰性に見えるものが多い.
ポイント
  • 市中肺炎のNo.1起因菌にして,菌血症の頻度も随一な双球菌である.
  • 肺炎からの菌血症での死亡率は6~20%におよび,年齢(65歳以上),COPD,介護施設への入所,人工呼吸器が必要なもの(これは当たり前に思えるが..)にて有意に死亡率が高い傾向にあった.[1]
  • 肺炎やこれら侵襲性感染症としても頻度の高い病原体であるため,米国では早期に肺炎球菌ワクチンの接種が開始され,小児への接種にも関わらず侵襲性感染そのものの数を減らすという効果が出ている.[2]
  • なお,少数ではあるものの,肺炎球菌性の心内膜炎・髄膜炎・肺炎をすべて持っている場合,Austrian's syndromeと呼ばれるが,感染性心内膜炎を持つ患者は25%が残りの2つのFocusを有していたとのことである.[3]
  • 髄膜炎を合併していない肺炎球菌感染症に於いて,予後不良因子は意識障害,呼吸不全,ショック,肝酵素の上昇(ALT>100IU/L),白血球減少である.これらは非常によく予後を反映するらしい.[4]
  • 自己融解の性質により,血液培養や純培養が意外に困難である.そのため,血液培養は陽性化しても寒天培地での同定ができないパターンもある.この場合に肺炎球菌抗原のテストが使用できるか,という研究があったが,どうやらほとんど役に立たないようである.[5]
  • コロニー写真を参考画像においておく.表面は平滑で,中央が陥凹しているのが特徴である.これは自己融解を示している.
参考画像
参考文献
  1. [1]  J Infect Dis. (2000) 182 (3): 840-847.
  2. [2]  MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2005;54(36):893.
  3. [3]  Clin Infect Dis. 1998;26(1):165.
  4. [4]  J Microbiol Immunol Infect. 2002;35(1):23.
  5. [5]  Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012 May;31(5):753-6. Epub 2011 Aug 7
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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