Enterococcus feacium〔腸球菌〕

Enterococcus feacium〔腸球菌〕
尿
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • 小型のグラム陽性球菌。
  • 5つくらいまでの短連鎖。
  • E. feacarisと比べると真円に近い形態である.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC OR S/T
抗菌薬の待てない人: VCM±GM
セファロスポリンは全般に無効
エラー注意
  • 腸球菌の属の判断はかなり熟練を要する.
ポイント
  • 腸球菌性の尿路感染,特に『単純性』尿路感染は非常に低頻度である〔5%以下〕[1]
  • 一方,院内感染,とくにカテーテル関連尿路感染や解剖学的異常が尿路に存在するような場合には頻度がハネ上がる.米国の463病院からのデータを総計するとカテーテル関連尿路感染の起因菌として腸球菌は3番目となっていた.
  • 高齢者でより頻度が高く,精巣上体炎といったトリッキーな尿路感染も報告がある.[1]
  • UTIとなった場合,経口でのオプションが少ないことが大きな問題となることが多い.
  • 解決策としてトリメトプリムの使用が取りざたされているが,腸球菌は周囲の葉酸を取り込んで代謝阻害を回避する能力を持つため,現状ではケースレポートレベルの治療オプションである事を加えておく.[2]
  • 上記のごとく,尿からの検出はすべからく複雑性尿路感染を示唆するため,菌血症が先行して,尿に濾しだされている(IEなどで腎膿瘍になっている)可能性も常に考慮すべきであろう.
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  2. [2]  J. Antimicrob. Chemother. (2008) 62 (1): 35-40.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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