Staphylococcus saprophyticus〔腐性ブドウ球菌〕

Staphylococcus saprophyticus〔腐性ブドウ球菌〕
尿
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • ブドウの房のように配置しGPC-Clusterと表現される
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ST
抗菌薬の待てない人: VCM
通常『待てない』状況はあまりない,というのも,本菌の多くは膀胱炎であるからである.
本菌以外のブドウ球菌なら,普通の尿路感染ではない.
エラー注意
  • IEなどからの血行播種→腎炎に注意.
ポイント
  • Sexual Activityが高い女性の単純性尿路感染として大腸菌に次ぐ頻度を持つ反面,男性の尿路感染としては比較的稀と言われている.[1]
  • リザーバーとしては消化管が最も重要で,女性の直腸における保菌率は40%程度,尿道にすでに存在する確立は6.9%ほどである.[2]
  • 実際に尿路感染を起こしていても,細菌尿の検出はテステープ法では困難である.というのも,亜硝酸の還元能力を備えていないことと,他の病原体に比して菌量が少ない傾向にあるからである.[2]
  • 時に心内膜炎や菌血症,腎盂腎炎というプレゼンテーションを取ることもあるが,基本的には稀であり,特定の遺伝子型や種が毒性に関与しているのかどうか,という点はまだはっきりしていない.[2]
  • ただ,尿路での病原性を発揮するに当たりUafAというヘマグルチニンを介して尿路上皮細胞に接着する能力がユニークなものとして認識されている.
  • 抗生剤の感受性に関してはあまり定まったものはないが,基本的にはS/Tやテトラサイクリン系,βラクタムの大半に感受性であるようである.[3]
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 8th edition
  2. [2]  Clin Infect Dis. (2005) 40 (6): 896-898
  3. [3]  Pathology Volume 23, Issue 2, 1991
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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