MRSA〔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〕

MRSA〔メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〕
尿
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
グラム陽性ブドウ球菌: Gram Positive Coccus Cluster
染色の特徴
  • グラム陽性球菌で、ブドウ状に配置する。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: MINO OR S/T
抗菌薬の待てない人: DAP OR VCM
単純な尿路感染であれば,経口薬でも十分に治療できるようである.[3]
エラー注意
  • 基本的にUTIは稀なPresentationであるため,本当に感染を起こしているのか注意
ポイント
  • 血流と軟部組織が得意なMRSAであるが,UTIも一応守備範囲には入っている.
  • しかしながら,一般的にはまれなものであり,細菌尿でさえ頻度は3.3%程度.感染が成立するとなるとそれよりさらに可能性が下がると思われる.[1]
  • ただ,尿から出ていることは決して看過して良いものではない.尿からのブドウ球菌の検出は,約11%に於いて血流感染からの血行性に播種しているからである.[1]
  • MRSAが尿から検出されるリスクは人工物,つまりは尿道カテーテルが最大のものである.意外なことに前立腺肥大,既知の尿路奇形,過去の尿路感染はリスクを増加させないようである.[2]
  • 治療は単純性の尿路感染においては経口薬でのマネジメントで充分である.ニトロフラントインなどが使用される他,S/Tやテトラサイクリンが使用されることも多い. →ガイドラインより:Guidelines (2008) for the prophylaxis and treatment of methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) infections in the United Kingdom
  • 手術創などを含む複雑性の要素が強い場合にはVCMなどのグリコペプチドやダプトマイシンが使用されることもある.ダプトマイシンはいよいよの切り札にしておくべきであろう.
参考文献
  1. [1]  J Urol. 1984 Oct;132(4):697-700.
  2. [2]  European Journal of Clinical Microbiology & Infectious Diseases September 2010, Volume 29, Issue 9, pp 1095-1101
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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