Staphylococcus lugdunensis 〔黄色ブドウ球菌なCNS〕

Staphylococcus lugdunensis 〔黄色ブドウ球菌なCNS〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
GPC-cluster
染色の特徴
  • グラム陽性球菌.やや大小不同で,クラスターを形成する.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 感受性あれば ABPC
抗菌薬の待てない人: VCM+CEZ
ポイント
  • 1988年にヒトの皮膚常在菌としてデビュー.その後,病原性が次々と明らかになってきた.
  • 分類上はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌に同じ)であるが,振る舞いとしてはS.aureusと同様である.が,『コアグラーゼ陰性』の時点で同定をやめてしまうと見つかってこない可能性がある.[1]
  • 多くの毒素や,フィブリン・ラミニン・フィブリノゲンといった生体蛋白への接着因子を発現しており,急性型の感染性心内膜炎,ペースメーカーなどのデバイス関連感染,皮膚軟部組織感染症や眼内炎,関節炎・骨髄炎の起因菌となる.中でもvon Willebrand因子への接着能力があり,生体弁の感染性心内膜炎形成に1役買っていると思われる.事実,感染性心内膜炎を来す頻度はS.aureusより多く,経過は劇的である.ただ,なぜか人工関連だとヌルい経過となることも多いようである[2]
  • 幸い,薬剤への感受性はS.aureusほどではなく,ペニシリナーゼ産生も25%,MRとなることは殆ど無い.[1]
  • 上記より,菌血症を呈する場合には『必ず感染性心内膜炎を除外する』『人工物の入った方では,除去しないとまず治癒しない』という原則をしっかり押さえる努力が必要となる.
参考文献
  1. [1]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease
  2. [2]  Infection. 2008 Aug;36(4):314-21. Epub 2008 Jul 21. Significance of Staphylococcus lugdunensis bacteremia: report of 28 cases and review of the literature.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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