Neisseria meinigitidis〔髄膜炎菌〕

Neisseria meinigitidis〔髄膜炎菌〕
喀痰
染色像
グラム陰性球菌(Gram Negative Coccus)
グラム陰性双球菌: Gram Negative Diplo-Coccus
染色の特徴
  • 小型だが染色性はよい。さほど貪食はされないよう.
  • 腎臓形、という連鎖形態をとる。
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG OR ABPC
抗菌薬の待てない人: CTRX
エラー注意
  • 形態学的にはNeisseria、Acinetobacterと判別は不可能であり、疫学、病歴から判断するしかない。
  • 双球菌という形態。肺炎で多いという特徴から、脱色が不十分だと肺炎球菌と間違えうる。周辺のWBC核がしっかり脱色されているか観察されたい。
ポイント
  • 肺炎の起因菌としては基本的に稀であると考えて良い.特に日本では局所流行の無い限りはなかなかお目にかからない.髄膜炎菌感染としてもPrimary pneumoniaは10%程度である.
  • 一般に喀痰からの検出単独では『肺炎』とは断じることができない.というのも,流行地では無症状であっても10%程度の外来患者は髄膜炎菌の上気道へのコロナイゼーションをきたしているからである.[1] ただ,流行地でない日本ではどうなのかと言われるとわからないが..
  • アメリカからのレビューで1974年~1998年までに発生した58件のケースシリーズでは,胸膜痛をきたす頻度が高く(53.9%),菌血症に至っている可能性が高い(79.3%)とされている.[2]
  • ただ,このレビューの中で喀痰のGram染色に言及しているものは17casesしかなく,うち14casesでGNDCが有意であったと記述されている.
  • 血清型はY型が半分程度を占めており,肺炎のPresentationに関連があると教科書では述べられる.[3]また別のレビューではW-135型が統計学的に有意であるとされている.[4] この2型は区別が困難で,簡易的な髄膜炎菌血性キットでは同一として扱われているため,その影響はあるかも知れない.
  • 治療は従来PCGが第一選択とされてきたが,近年低感受性・耐性・ペニシリナーゼ産生株は各国で報告があり,地域によってはCTRXなどの第3世代セファロスポリンが推奨される.これは高率に合併するCNS感染に対抗するため,という視点もある.なお,βラクタムアレルギーの患者に対してはクロラムフェニコールが第一選択となっているようだ.[4]
  • なお,この感染が発覚した場合には,接触者に対して予防的抗菌薬投与が適応となる場合がある.本人だけのモンダイで終わらないのも,厄介なポイントと言えるだろう.
参考文献
  1. [1]  J Infect Dis. (1970) 121 (1): 48-54.
  2. [2]  Clin Infect Dis. (2000) 30 (1): 87-94.
  3. [3]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  4. [4]  Clin Infect Dis. (2003) 37 (12): 1639-1642.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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