Mycobacterium tuberculosis 〔Ghost Bacillus:結核〕

Mycobacterium tuberculosis 〔Ghost Bacillus:結核〕
喀痰
染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
グラム染色で『透明になる』: Ghost bacillus
染色の特徴
  • 透明な桿菌として見られる
  • 当然感度は高くない
  • ピントをややずらすと浮かび上がるように見え,ただの染色ムラと区別できる
  • 参考画像で探してほしい
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 喀痰で見えた以上,まてない
抗菌薬の待てない人: 基本的には イソニアジド・リファンピシン・エタンブトール・ピラジナミド 4剤併用
キノロン使用は単剤ではもはや禁忌である
エラー注意
  • 当然かなり稀にしか見つからないし,菌量が多くないと引っかからない.
ポイント
  • 喀痰に出現する結核菌の,レアな表現型.抗酸菌染色で大量に見えても,Gram染色では見えないことが大半である.なぜなのかは知らない..
  • 喀痰の染色は古典的でありながらも今以って第1線で用いられている診断手法である.最も有名なZiehl-Neelsen染色は石炭酸フクシンで抗酸菌の分厚い脂質の細胞壁を染め,脱色した後にメチレンブルーで対比的に染色を行うものである.蛍光染色も概念としては似ており,フクシンの位置で用いられる染色液がローダミン・オーラミンとなり,暗視野で結核菌のDNAが染色されることにより,良好な検出感度を誇っている.
  • しかし,感染の除外と言う意味では,喀痰のスメアのみでは到底不十分であることは強調しておく必要がある.直接塗抹染色は感度31~80%,集菌法を用いても感度は52~98%と相当なばらつきがあり,蛍光染色をもってしても57~97%である.[1]
  • また,蛍光染色に使用される色素は室温での安定期間が短く,4ヶ月そこそこで使用期限がきてしまうことも保全・管理上問題となる.ちなみに,蛍光染色とZiehl-Neelsen染色は染色されている細胞内器官が異なるため,2重染色を行うこともできる.
  • なお,喀痰が取れない際の代替として使用される胃液培養ならびに気管支鏡採痰であるが,胃液塗抹は当然感度が下がり,気管支鏡採痰も誘発痰3回以上に感度を上げることはかなわなかった.[2]
参考画像
参考文献
  1. [1]  感度と特異度からひもとく 感染症診療のDecision making 『チール・ニールセン染色』 忽那賢志
  2. [2]  Clin Infect Dis. (2007) 44 (11): 1415-1420.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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