Hemophilus influenzae〔インフルエンザ桿菌〕

Hemophilus influenzae〔インフルエンザ桿菌〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
Gram negative coccobacillus(グラム陰性球桿菌)と呼ばれる.
染色の特徴
  • 染色性も個体差がつよい.
  • 血液培養では特に多型性を示し易い.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CTRX
ポイント
  • 1982年に季節性インフルエンザの後の喀痰検体から検出され,報告されるに至った病原体である.その経緯から,インフルエンザの起因菌であると長らく勘違いされていた.
  • 莢膜を形成して見えることもあるが,その場合は6種の莢膜抗原を有しており,そのうちのType bが悪名高きHibである.
  • 小児においては特に猛威を振るい,急性喉頭蓋炎を始めとする侵襲性感染症の原因となるHibであるが,一方,高齢者においては莢膜を保たない種,つまり,血清型を同定できないNon typeableの血清型が相対的に多くなるようである.[1]
  • その原因として,Non typeableの種類はCOPD・嚢胞性繊維症などの障害を受けた気道上皮に定着しやすい事が知られている.なお,一般的に本菌は細胞外寄生種と認識されているが,特に気道上皮においては細胞内に潜むことも知られる.[2]
  • また,意外な感染部位として,産褥後の卵巣欄肝膿瘍も知られている.[2]
  • 菌血症としての発現は,実はかなり頻度が低く,10万人あたり1.7case/yearとなっている.そうなるヒトは多くが肺をFocusとしており,アルコール依存症・心血管疾患・HIV感染症・悪性腫瘍などが背景疾患として存在する事が多い.[2]
  • 薬剤耐性は非常に地域差が大きいものの,一般的にβラクタマーゼ産生によるもの(ABPC/SBTが効く)が多く,PBPの変異による(いわゆるBLNAR)は少ない.そして腸内細菌と異なり,外膜の能動的排出機構:efflux pumpは非常に稀であることが知られる.[3]
  • ただ,efflux pumpを取得した菌はマクロライドへの耐性を示すこともあり,注意しておくべきと思われる.キノロンの耐性もターゲットとなるタンパク質の変異で報告はされているものの,やはりこちらもかなり稀な現象と言える.[3]
参考文献
  1. [1]  J Infect. 2011 Feb;62(2):142-8
  2. [2]  Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of infectious disease 9th edi
  3. [3]  Clin. Microbiol. Rev. April 2007 vol. 20 no. 2 368-389
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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