Hungatella hathewayi〔グラム陰性にみえる芽胞形成菌〕

Hungatella hathewayi〔グラム陰性にみえる芽胞形成菌〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
紡錘形をさらに伸長したような桿菌となる.
染色の特徴
  • 細胞壁構造としてはGram陽性菌だが,実際の染色では陰性となることが多い.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: PCG・ABPC OR CLDM
抗菌薬の待てない人: MEPM OR MNZ
感受性のデータは現状あまり揃っていない.
エラー注意
  • グラム陰性菌と誤認された場合,同定不能となる可能性がある.
ポイント
  • 紡錘形でグラム陰性に染まりやすい芽胞形成菌はClostridium clostridioformeという菌が代表であったが,近年遺伝子検索の技術が発達してきたことにより,この菌が厳密には複数の菌株であることが分かってきた.本菌はその一種として2001年にClostridium hathewayiとして分類され,2014年にHungatella hathewayiとして再分類された.
  • 菌名は近代の細菌学者であるCharles L. Hatheway(ボツリヌス菌属に関する研究で多大な功績を持つ米国の細菌学者)に敬意を表し,その名をとって命名されている.[1][2]
  • ヒトの腸内に常在する他,環境にも広く分布し,ヒトでの感染が初めて報告されたのは2004年.菌血症を伴う胆管炎であった.[3]
  • 発見及び同定が2000年代と新しいため,残念ながら感受性のデータは多くない.日本からのClostridium属としての報告ではセファロスポリンへの耐性は比較的高頻度であるようである.[4]
  • 症例報告は上記の胆管炎のほか,虫垂炎などで菌血症をきたしたもの[5],子宮筋腫の摘出術後のSSIで菌血症として検出されたもの[6]などの報告があり,やはり腹腔内感染が強い印象がある.
参考文献
  1. [1]  Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2002, 52, 685-690.
  2. [2]  Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 2014,64, 710-718.
  3. [3]  Emerg Infect Dis. 2004 Nov; 10(11): 1950–1952.
  4. [4]  感染症誌 82:205-212,2008
  5. [5]  Anaerobe. 2015 Oct;35(Pt B):44-7.
  6. [6]  BMJ Case Rep. 2014 Mar 4;2014.
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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