Delftia acidvorans〔デルフティア〕

Delftia acidvorans〔デルフティア〕
血液
染色像
グラム陰性桿菌(Gram Negative Rod)
小型のグラム陰性桿菌
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: CAZ・PIPC/TAZ
抗菌薬の待てない人: MEPM
基本的には緑膿菌として対応.
アミノグリコシドは耐性株多し.
ポイント
  • 通常は土壌や水場に存在するブドウ糖非発酵菌で,Camamonas→Pseudomonasと名称が変化してきた菌である.病院内の環境にももちろん存在するが,ヒトの常在菌には通常なり得ない.
  • 興味深い事に,自然界では金塊の表面などから検出されることがある.金はめったにイオン化しない重金属であるが,イオン化した場合は酸化力が非常に強く,生体への毒性は極めて高いものとなるため,金塊の表面に付着できる微生物はあまり多くない.
  • Delftiaは金イオンを金属金に変換し,生体を守るという酵素を発現しており,この性質を応用すれば自然界の金イオンを金塊への変換することが可能である.この事実は一時『金塊を産む細菌』として取り沙汰されたが,実際にこの菌を使用して金塊を作ることは不可能ではないがコスト的に割に合わないようである.[1]
  • 病原性に関してはほとんどないものの,免疫不全者のカテーテル関連感染や肺炎などとしての報告は散見され,IEの報告も中にはある.[2][3]
  • 緑膿菌とよく似た薬剤感受性を示すが,サンプル数が多くないことが災いし,正確な耐性機序やその頻度は明らかとなっていない.ケースシリーズなどを見るに,広域ベータラクタムでの治療成功が多いようである.[2][4]
  • それ以外の選択肢としてはチゲサイクリン・キノロンへの感受性は比較的良く(ただ,治療に使用した例は少ない.),アミノグリコシド系には耐性を形成している可能性が高いようである.
参考文献
  1. [1]  Nature Chemical Biology volume 9, pages 241–243 (2013)
  2. [2]  Can J Infect Dis Med Microbiol. 2015 Sep-Oct; 26(5): 277–279.
  3. [3]  J. Clin. Microbiol. 2012 Nov;50(11):3799–3800.
  4. [4]  Respir Med Case Rep. 2019; 27: 100835.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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