Moraxella catarrhalis〔モラキセラ〕

Moraxella catarrhalis〔モラキセラ〕
血液
染色像
グラム陰性球菌(Gram Negative Coccus)
染色の特徴
  • 小型のGNCとなる.
  • 喀痰では双球菌となるが,血液培養ではそうでもない.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC/SBT
抗菌薬の待てない人: CTRX
CLDMは無効であることが多い.
ポイント
  • 上気道検体でよく検出され,染色性が非常に良いことと,その特徴的な双球菌スタイルでグラム染色ファンの心を掴んで止まない菌である.
  • 副鼻腔炎や中耳炎を始め,上気道・下気道の感染症ではよく原因となるが,侵襲性感染となることは存外に稀である.
  • 2007年時点でのレビュー[1]では,侵襲性感染の報告は75例あり,菌血症単独からそれをともなったIE,新生児髄膜炎,関節炎などが報告されており,その後の症例報告[2]ではグラフト感染などもあるようだ.
  • 年齢層はかなり広く,免疫不全でも免疫正常でも報告があることから,侵襲性感染に発展する明確なリスク因子ははっきりしていない.
  • ただ,小児領域における小規模なケースコントロールスタディ[3]では,経鼻デバイス(胃管など)がリスクとして検出されたものもある.
  • 日本では喫煙者を中心にβラクタマーゼを産生する菌株が多く,侵襲性感染となった場合には初期治療はCTRXかキノロン系を選択することが無難であると思われる.
  • ちなみに,本菌のコロニーは小型白色で培地上に粘着せず,白金耳で釣菌しようとするとホッケーパックのように滑って逃げるという特徴がある.是非一度滑らせてみてほしい.
参考文献
  1. [1]  Lab Med. 2007;38:420.
  2. [2]  BMC Infect Dis. 2016; 16: 73.
  3. [3]  BMC Infect Dis. 2016 Feb 9;16:73.
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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