Cryptococcus neoformans〔クリプトコッカス〕

Cryptococcus neoformans〔クリプトコッカス〕
髄液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • 莢膜のかわりに架橋構造が見えている.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: 待てる状況はまずない.
抗菌薬の待てない人: アムホテリシンB+フルシトシン OR フルコナゾール高用量(あまり推奨されない)
ポイント
  • クリプトコッカスはヒトへの病原性を持つ酵母様真菌の一種であり,墨汁法などで目立つ莢膜を有することがCandidaとの見た目上での相違点となる.Gram染色では莢膜を確認できることがある他,写真のようにムコ多糖による架橋構造を呈し,人工物のような画像となる.[1]
  • 血液培養の項目にもあるように,基本的には免疫抑制患者に発生する感染症である.
  • 髄膜炎の治療はHIVの有無で多少異なるが,大まかにアムホテリシンBとフルシトシンの併用が推奨される.[2]どちらも副作用が多く,投与継続に注意が必要であるため,専門科へのコンサルトは行っておくべきであろう.
  • 頭蓋内圧が非常に高くなることが特徴として知られており,こちらも禁忌とならなければ腰椎穿刺を反復して減圧に務めるべきとされる.[3]
  • クリプトコッカスはきわめて中枢神経への親和性が高く原因としては,血液中にくらべて発育を阻害する因子が少ない,髄液中の補体の活性が低い,などが考察されているが,十分に解明されているわけではない.
  • 本菌の分類は実は多くの更新を経ており,莢膜の血清型での分類から,遺伝子学的な分類方法に変遷しつつある.現在はCryptococcus neofromans/gattii complexはさらに7種類に分類できそうであることがわかっている.[4]
参考文献
  1. [1]  Clin Microbiol Infect. 2018 Nov;24(11):1156-1157
  2. [2]  Clinical Practice Guidelines for the Management of Cryptococcal Disease
  3. [3]  Clin Infect Dis. 2014 Dec;59(11):1607-14. Epub 2014 Jul 23.
  4. [4]  Fungal Genet Biol. 2015 May;78:16-48. doi: 10.1016/j.fgb.2015.02.009. Epub 2015 Feb 23.
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グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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