Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕

Streptococcus pneumoniae〔肺炎球菌〕
髄液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
連鎖形成:GPC-chaine
染色の特徴
  • ムコイド型であり,莢膜の代わりにピンク色の粘膜を周囲に持つ
  • 通常2連鎖であるが,6連鎖くらいのものもあった.
頻度
★★☆
抗菌薬
抗菌薬の待てない人: CTRX+VCM 髄膜炎Doseにて 忘れずにデキサメタゾンの投与を!
この状況では『待てる人』は存在しない ※髄液検体のため
ポイント
  • 成人の髄膜炎で最大の頻度を誇る菌である.
  • 特にお年寄りで発生率が高く,米国のレビューでは髄膜炎の60%が本菌であり,そのうち70%は高齢者ということになっていた.[1]
  • 有名な話であるが,肺炎球菌のペニシリン感受性の低下にともない,CLSIは2008年にPISPというカテゴリーを作成.実質髄膜炎での『ペニシリン耐性』を規定した.〔MIC>0.12〕[2]
  • 本菌の髄膜炎となればVCMが併用される傾向にあるが,くれぐれも単剤での使用は避けるべきである.というのも,VCMの髄液移行性はそんなによくないためである.TDMは15-20にしっかり保っておきたい.
  • ニューキノロンは治療の選択肢である.が,治療経験そのものは不十分である.
  • 低血圧・意識障害・痙攣の何れかが見られた際は予後不良と言われる.(死亡率・後遺症という意味で)
  • デキサメタゾンの使用はされるべきであるが,確立したエビデンスは『肺炎球菌髄膜炎における死亡率・合併症の減少』[2]である.ただし,発展途上国においてはそもそもの予後が非常に悪いこと,HIVなどの比率が高いことにより,デキサメタゾンは有意な効果を上げられていない.[3]
  • なお,PCV7 or 13のコンジュゲートワクチンにより,髄膜炎の頻度の確実な減少が観察されている.が,一方で非ワクチン型による発生がDominantと化してきており,注目しておく必要があるだろう.なお,ワクチンは薬剤耐性に関しては関連を持っていないようである.[4]
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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