Actinotignum schaalii〔アクチノマイセスっぽいなにか〕

Actinotignum schaalii〔アクチノマイセスっぽいなにか〕
血液
染色像
グラム陽性桿菌(Gram Positive Rod)
コリネバクテリウム様の小型のグラム陽性桿菌 写真ではやや放線菌に近いようにも見える
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: ABPC
抗菌薬の待てない人: VCM
キノロン系には耐性を有する可能性がある.
エラー注意
  • 通常の尿培養では検出されにくい.
ポイント
  • 1995年に初同定.その時はActinobaculumと分類されていたが,2015年にその群がさらに2つに分けられ,Actinotignum schaaliiという命名に今は落ち着いている[1].schaaliiはドイツの大学に所属する微生物学者,Klaus P. Schaalに由来している.(アクチノマイセス属菌の研究で高名)
  • 泌尿・生殖器周辺の常在菌と考えられているが,通性嫌気性菌で,通常の培養時間・環境では発育が悪く,5%CO2(微好気条件)環境が必要となる.尿に対してこの培養条件は通常のルーチンには無いため,尿培養や膣培養で検出されることは困難となる.
  • 生化学的な同定も困難であり,質量分析器の登場以前はDNA検索を行う他なかったが,MALDI-TOF-MSの臨床応用で同定が比較的容易となり,報告数が増加しつつある.
  • ヒトへの感染は尿路感染が大多数を占め(それでも全尿路感染の1.7%程度であると試算される[2]が),血流感染も間々伴う.関節炎[3]・蜂窩織炎[4]・IE[5]も時に発生する.
  • 多くのケースシリーズで警告されているのは,本菌はS/T合剤やキノロンといった尿路感染の内服治療によく用いられる薬剤に高いMICを示すことがあり,これらの薬剤での治療は適切でないことがある,という事実である.
  • 反面,βラクタムのMIC値は比較的低いため,こちらは治療に使用できると思われる.理論上,抗MRSA薬の使用も許容されると思われるが,治療効果に関して詳細に論じたデータはない.
参考文献
  1. [1]  Int J Syst Evol Microbiol 2015; 65:615-624.
  2. [2]  Clin Microbiol Infect . 2016 Apr;22(4):388-390.
  3. [3]  Infection 44: 547-549.
  4. [4]  Anaerobe 43: 43-46.
  5. [5]  Emerging Infect. Dis. 16: 1171-1173
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何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

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