20XX年 12月に左大腿骨顆上骨折.整形外科にてプレート留置が行われている.
同年 入院4~5日前 発熱,悪寒戦慄あり,ER受診.骨折した側の膝を痛がっていたようだが,解熱剤で帰宅.
入院当日 症状続き,再び悪寒戦慄認めたため,ER再診.体温は40℃,呼吸数も30を超える.骨折側の膝に明らかな腫脹・発赤・圧痛みとめ,右肩は可動 時痛のため,挙上不能.左手第1指の付け根は蜂窩織炎のような様相を呈していた.(写真等は許可を得たら掲載します.)
#Sepsis
#多発関節炎
#インプラントあり
上記から,直ちに膝関節の穿刺が行われました.こんな見た目.計測した所,WBCは12万検出され,モノスゴク念入りに検鏡してこんな連中を見つけました.
分かりますか? 別の画像はアイキャッチになっているものですが,ほんの2つだけ,連鎖状のGPCが確認出来ます.
#化膿性関節炎(膝・肩・手)
#GPC-chain陽性
血液培養を3set取って,後日全ボトルからStreptococcus agalactiaeが検出されました.
この菌そのものに関しては別口のページがありますのでぜひご参照. → http://gram-stain.com/?p=988
ここでは人工関節でないインプラント,髄内釘における感染マネジメントをざっくり見ていきましょう.
参考はこちらの文献 Open Orthop J. 2013; 7: 219–226. Management of Infection After Intramedullary Nailing of Long Bone Fractures Treatment Protocols and Outcomes
長管骨の骨折というのは高エネルギー外傷での発症が多い重篤な外傷です.髄内釘はその治療としてはゴールド・スタンダードであり,この手術施行後の感染は外傷手術後の感染におおよそ準ずるものとされています.
すなわち,開放骨折で上昇が見られるものの,多くは4~7%というレンジです.
骨折した部位の近傍の,しかも骨髄に直接のアクセスを提供しているネイルに発生する感染は往々にして骨折の回復を妨げ,中途半端な状況での抜釘を迫る恐ろしい合併症です.起因菌はほとんどがS.aureusで,SSIとしての特徴を色濃く残しています.
感染はあまり知られていませんが,ステージングと骨折部の癒合の程度により,ある程度マネジメントの方向性をつける事が出来ます.
First stage:蜂窩織炎を生じているのみで,膿瘍や開放骨折でない場合.この時はインプラント抜去や膿瘍穿刺ドレナージは必要なく,抗生剤加療のみで大丈夫としています.
Second stage:創部の治癒が遅延し,創部より膿性の浸出液が出ているような状況です.骨折の癒合不全は発生している可能性があり,ネイルの緩みも場合によっ ては発生します.ネイルそのものが安定しているなら,骨折の癒合が起こるまではそのままでもいいかもしれません.
Third stage:ネイル周囲に骨髄炎を合併している場合です.原則ネイルの抜去及び周囲のでデブリードメントを行わないと治癒は望めません.骨折の部分の癒合が不十分であれば,骨移植等の手段を用いてでもネイルの抜去は行うべきとされます.
そして,感染巣の抜去後には2~6週間に渡り抗生剤加療が必要とされています.
この方は最終的に膝の化膿性関節炎のみならず,ネイル周囲の膿瘍形成も起こしており,Third stageでしたが,ネイル抜去は再骨折のリスク非常に高く,行われませんでした.
その代わり,膿瘍部はOpen drainageが施行されました.
骨 折がそもそも良くなっていない以上仕方のないことですが,感染巣のコントロールはつかないということであり,その段階でLong term supressionが確実.膝の可動域も大いに小さくなってしまい,ADLも大きく低下しています.退院はいつになることか..
何かあれば!
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