Candida lusitaniae〔レアカンジダ〕

Candida lusitaniae〔レアカンジダ〕
血液
染色像
グラム陽性球菌(Gram Positive Coccus)
染色の特徴
  • GPC-hugeと表現されるほど巨大なGPCとして観察される。
  • かなりの視野探したが,仮性菌糸の形成はなく,発芽酵母がメインで見られ,非アルビカンスを想定できる.
頻度
★☆☆
抗菌薬
抗菌薬の待てる人: FLCZ
抗菌薬の待てない人: MCFG
Candidaはアルビカンスであるかどうかで対応が大きく変化する.
待てそうであればアゾール系抗真菌薬による治療を行い,重症あるいは非アルビカンスを想定する場合にはMCFGを使用する.
コイツに関しては,LAMBは感受性が低い可能性がある.
エラー注意
  • この種に限らず、Candida属の菌血症を確認した際には眼科的診療が必須である。高確率で眼内炎を合併し、自覚症状は不可逆変化が起こるまでないこともある。
  • その他,ルーチンに行うべきは以下 血液培養フォロー 経胸壁心エコー 血管内デバイスの検索
ポイント
  • 非常に珍しいタイプのCandida属である.大きな特徴として,アムホテリシンBに耐性を示すことが知られている.出現頻度はC. guilliermondii,C. kefyrと合わせても2%以下[1]とされ,治療データはまだ十分な蓄積がない.
  • 最初の分離は哺乳類の消化管からであり,環境からは柑橘の皮やフルーツジュース,乳腺炎の乳牛からの牛乳での分離が知られている.
  • ルシタニエイという名前はローマ帝国のルシタニア属州(スペインとポルトガルにまたがる地域)と,第一次世界大戦におけるUボートの通商破壊の一環として撃沈されたルシタニア号が綴として近いが,どちらが由来か管理人は知らない.
  • 1987年ならびに1989年に本菌による感染症のレビューがでているが,そこでの死亡率はそれぞれ78%,53%と極めて高い[2],[3]
  • が,アゾール系抗真菌薬の使用が1990年以降可能となった以降の2003年のレビューでは,その死亡率は5%程度となっており,抗真菌薬の選択肢の増加により予後が大きく改善されたことが伺える.[4]
  • 多くは血液を含む悪性腫瘍,化学療法,長期のステロイド治療などの重篤な免疫不全状態の患者に発生し,真菌血症がプレゼンテーションの大半を占めている.[4]この特徴はいわゆる侵襲性カンジダ感染症のパターンと同一であると思われる.[5]
参考文献
  1. [1]  J Clin Microbiol. 2010 Apr; 48(4): 1366–1377.
  2. [2]  Clin Infect Dis. (1987) 9 (5): 1006-1012.
  3. [3]  J Clin Microbiol. 1989 Feb; 27(2): 236–240.
  4. [4]  Clin Infect Dis. (2003) 36 (2): e14-e18.
  5. [5]  N Engl J Med 2015; 373:1445-1456
URL :
TRACKBACK URL :

何かあれば!

グラム染色の前書き

 風邪にクラビット、肺炎にセフトリアキソン、尿路感染にセフメタゾール...?本当にその抗菌 薬は必要だろうか?その処方は安心を買うためのものだろうか?耐性菌のリスクをどう評価するか? グラム染色は、そんな抗菌薬選択の答えを導くことができる。グラム染色(Gram Stain)をマスターし て、あなたの日常診療の強力に補助するツールを身につけよう。

グラム染色とは…?

 そもそも、グラム染色(Gram Stain)とは、細菌等を染色液によって染め、分類する方法である。名前の由来は1884年にデンマークの医師ハンス・グラムにこの染色法が発明されたことによる。日常診療やERで簡易に施行できるが、臨床での抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる。感 染症内科は言うまでもなく、日常臨床に携わるプライマリ・ケア医や総合診療医、家庭医にも重要な手技である。グラム染色(Gram Stain)は研修医のうちから習熟することが望まれる。

グラム染色のHPについて

 当HP「グラム染色(Gram Stain)」には、グラム染色(Gram Stain)の全てを詰め込んでいる。グラム染色(Gram Stain)の手順から染色像の判定、そして抗菌薬の決定から治療効果の判定までをできるだけ分かりやすく解説したつもりである。また、もしわからなければ、当方に直接相談できる窓口も設けた。どんどん相談してほしい。当ホームページ「グラム染色(Gram Stain)」を少し巡回された方はすぐに気づかれたとは思うが、マニアックなグラム染色像もふんだんに盛り込み、それぞれの菌についてはこころを込めてたくさんのポイントやトリビアを参考文献を付して提示した。患者さんが特殊な感染症にかかった時はもちろん、読み物としても楽しんで欲しい。

みなさまの日常診療の役に立て、少しでも患者さんのためになれば幸いです。

グラム染色(Gram Stain)管理人 代表 麻岡大裕(感染症内科)
平井孝幸(膠原病内科)、濱口政也(総合内科)、松島秀幸(膠原病内科)、植田大樹(放射線科)

大阪市立大学 細菌学教室 公認

osaka city university